実力を伸ばす稽古法

実力を伸ばす稽古法(本名 和彦)

2022年1月24日

2021.6 KENDOJIDAI

「正しい、美しい剣道をしたい。そのためにはしっかりとした基礎・基本を身に付けなければいけない」と語る本名教士。剣道を正しく学び、相手の心を打つ一本を生み出すためには、常日頃から意識を高く持ち、質の高い稽古を行なう必要がある。

「上達は稽古の量と質の掛け算である」。

本名教士の「剣道上達の心構え」について伺った。

本名和彦教士八段

ほんな・かずひこ/昭和38年茨城県日立市出身。土浦日本大学高から日本大に進み、卒業後株式会社日立製作所に入社。国体優勝、全日本実業団高壮年大会六・七段の部優勝、全日本都道府県対抗大会3位、全日本東西対抗大会出場など。現在、同社グロ ーバル人財開発部日立工業専修学校教頭。

「剣道上達を考える上で、何が一番大切であるか」を考えた時、まず基礎の部分がしっかりと出来ていなくてはいけません。しっかりとした基本を身に付けていなければ、どれだけ稽古を積んでも上達が見込めません。崩れた姿勢を直さないまま面を打つ稽古を重ねても、誰もが認める一本はいつまでも打てないでしょう。

 剣道の上達に対するひとつのイメージがあります。

 子どもたちが砂場で山をつくろうとしていたとします。さらさらとした砂を一所懸命積み上げたとしても、なかなか高く積み上がりません。しかし、そこに水を掛けると砂が固まりやすくなります。

砂をかけては水をかけて固め……、をくり返せば高い山を作りやすくなるでしょう。剣道にも同じことが言えます。

 富士山が高く、かたちが美しいのは数回の噴火を経て裾野から形作られてきたからです。剣道の稽古法は、子どもから大人までほぼ同じことを行ないます。しかし、初心者と熟練者では、素振り一本にしても「意識の差」があらわれており、その中身は違うものになっています。剣道は、ただ漠然と竹刀を振っていても強くなりません。絶えず意識を高く持つなどし、剣道の質を高める工夫が必要です。

 上達は稽古の量と質の掛け算ではないかと思います。

 私は現在、株式会社日立製作所が運営する日立工業専修学校の教頭をつとめています。全校生徒が剣道を授業で学ぶことになっており、また、剣道部もあります。部員の中には撞木足が直らないなど、悪癖を抱える生徒がおり、時折注意を促すのですが、なかなか直りません。

「悪癖を直したい」という意識を持ちながら稽古をしようとしても、根気強く持続させるのは骨が折れるものです。しかし意識を常に持ち続けなければ、体に染み込んでいきません。しかし、だからこそ意識を変えて稽古を続ければ、上達の手ごたえを感じることができるでしょう。

 しかし意識を変えるというのは本当に難しいと感じます。本校は全校生徒が寮生活をおくっています。時折生活態度などについても注意をしているのですが、今までの経験上、部屋が乱雑な生徒は剣道も雑なように感じます。剣道即生活などという言葉もありますが、一つ一つのことを丁寧に実践できない性格が稽古のやり方にも表れます。

 しかし、そうした性格・稽古のやり方を変えるためには「言われたことだけをやるだけ」ではなく「自分から『どうしたら直るのか』」をしっかりと考える、つまり自分の意志を明確に持ってやらなければ変わりません。

「こうしたい」という意思をしっかりと持って稽古を継続する習慣を身に付け、しっかりとした基本の土台をつくりたいと、私自身もそのことを大切にしながら稽古に取り組んでいます。

素振り



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