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子どもが夢中になる足さばき(今里 学)

2022年8月22日

KENDOJIDAI 2021.8

いかに有効打突を取るか、そして相手に取らせないか。そこには間合いが介在し、体さばきすなわち足さばきがものをいう。神奈川県の公立高校の教諭として、幾多の学校を全国大会へと導いている名将・今里教士に足さばきの重要性と実践練習について伺った。

写真=西口邦彦
構成=土屋智弘

今里 学

いまざと・まなぶ/昭和39年神奈川県生まれ。東海大相模高校から筑波大学に進み、卒業後、神奈川県立高校教員となる。国体、全日本都道府県大会、全国教職員大会などに出場。教士八段

 そもそも足さばきと一口に言っても、足裏のことを指すのか、あるいは腿や膕の作用を言うのかさまざまだと思いますが、私は体さばきとして捉えて指導しています。

 剣道に大切なものとして間合いがあります。自らの間合いを有利に進め、相手を捉える位置に移動する、つまり打ち間を的確に捉えることが重要です。また、そこから思い切って飛び込むのか、ほぼその場で踏み込むのか、相手の出方によって技を選択し、繰り出します。他方で相手の打ち間にさせないことも大事です。

 よく試合などで、「足が止まったから打たれた」という場面があると思います。正確には相手の打ち間で、自分の足が居着いたということです。また初心者は間合いが理解できておらず、そこに居たら危ないという所に身を置き、打たれてしまいがちです。つまり間合いを制するものが剣道を制するといっても過言ではありません。

 剣道では昔から足の重要性が説かれていますが、私の経験から考えると、的確な足さばき・体さばきは突き詰めると脳や神経の作用に関わってくるものだと思っています。

 専門家の書いた本などから、私なりに感じたことを述べます。脳の中は場所によって、違った役割を担っているそうです。例えば目に入った情報を処理する「視覚野」、音の情報を処理する「聴覚野」、触っていることや痛いなどの情報を処理する「体性感覚野」などと分けられます。つまり人の体のさまざまな部位に対応する機能が大脳の各箇所に対応しているのです。また大脳の表面積に対して、体のそれぞれの部分がどれくらいの比率を占めているかの研究もなされています。図を見れば分かるように、指や味覚を感じる舌などはその比率が大きいですが、胴体や足はそれほどではありません。手は意識せずとも、字を書くことなど、繊細な仕事ができます。それに比べると足や腰など、体さばきを担う部分はそうでもありません。そのためにより学習を積み、脳の回路を開くという意識で反復練習をするのが大切だと感じています。

 竹刀操作をするのは上半身です。手や腕は日常から使っていますので、習得に時間はかかるものの、竹刀の振り下ろし動作はそこまで複雑に感じるものではありません。しかしすり足での送り足は、日常の動きとはかけ離れています。ですから日頃から足さばき・体さばきの訓練をしておくべきなのです。剣道の稽古や試合で、調子の悪いときなどは身体がフワフワするような感じになると思います。

 そういう姿を生徒たちに認めた場合は、「足の裏で床を感じろ」と指導しています。つまり足にまつわる神経を研ぎ澄まし、間合い取りに集中するという意味になります。

 目で捉えた相手の状態によって的確に身体が動く体さばきができるようになるまで訓練を繰り返して神経を通わす。それは脳梗塞の方が神経を再度通わすために行うリハビリと似ています。いくつかの剣道部ではやっているようですが、利き手の反対側、つまり左手で箸を持ちご飯を食べる訓練にも通底します。私は少年指導も行っていますが、幼い頃から剣道をやっている子は、足さばきの感覚が体に染み付いているので、自然と間合い取りができています。意識せずとも自然と身体が動くようにすることが理想です。普段行わない動きだからこそ、訓練しないと細かく使うことができません。

反復しつつバリエーションを増やしていく

 先ほども述べました通り、足さばき・体さばきの練習とは神経を通す訓練です。反復練習をしつつ、バリエーションを増やしていくことが大切です。

 剣道の足さばきは、相手が下がったら前に出て打つ。入ってきたらその場で打つ、予期せぬ動きだったら横にさばくというように状況に応じて変化します。足さばき・体さばきは相手があってのもので、単独で存在するものではありません。そして上体とつなぎ合わせ、竹刀操作とも一体化させるものです。相手の動きに応じて適切に体をさばくまで訓練をします。

 その上でいくつかのポイントを述べておきましょう。まずは足の重心のかけ方ですが、相手の動きを読んだ際、瞬間的に体を動かさなければいけません。体はまず重心のズレを先に入れる感覚で動き始めます。高校生は動きが速く複雑なので、いつでも体が動くように重心を移す準備をしておかなければいけません。そのためにも、相手の動きを認知することが先決で、その上で間合いを合わせる、危険を察知したら間合いを切るという、自在な動きが生まれます。

 構えの際の足幅を考えてみます。教本では、右足の踵と左足のつま先がほぼ同じ、もしくは半歩後ろにと記載されていますが、高校生はそれよりも多少広くても良いと思っています。あまりに狭いと対応が難しくなりますし、体が浮いてしまいがちです。多少広めのスタンスの方が、前にも後ろにもすぐに対応できます。歳を取れば脚力が衰え、足幅が広いままでは跳べなくなりますし、高段位を目指せば、自然と足幅は狭くなっていきます。ですから高校生のうちは多少足幅が広くても、足を使った剣道を心がけるべきだと考えています。

 左の足首から膕、腿を固めて、チャンスがあった際、瞬時に出られるようにすることを、「剛体化」と呼びます。緩んでいると反応できませんし、かといって伸びきっていても無理です。「剛体化」の反対は「弾性体」と呼ばれ、緩めることを意味しますが、間合いなどを切るときは、緩めて切ります。逆に相手が出てきた時など、瞬時に出るときは「剛体化」します。「剛体化」することで力が関節ごとに逃げずに打突へと集中します。一流選手は自然とやっていることですが、軽く打っているように見えても、威力のある打突となります。

 また構えた時に骨盤をやや前傾させる方が「剛体化」はしやすいと感じています。人間の背骨はS字状になっています。そのため少しの前傾で骨が締まりやすく、安定化することで、冴えある打突が生まれやすいです。一方、股関節は大きく前後に開きませんと、前に出る勢いが削がれてしまいます。開かないで踏み込もうとすると、スキーでいうところの後傾姿勢となり、一度腰を落としてからの動き出しとなって、動作が遅くなります。さらに右の膝から前に出るイメージで行うのが大事です。

打突前後の体の使い方を意識させる



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