刃筋

刃筋と鎬を意識せよ(石井 猛)

2023年6月12日

2023.1 KENDOJIDAI

撮影=西口邦彦

刀法と身法と心法。
剣道はこの三つの法を重視している。
刀法を意識するには刃筋と鎬の効用を大事にしなければならない。より上質な剣道を身につけるための稽古法を考える。

石井 猛 教士八段

いしい・たけし/昭和33年茨城県生まれ。大子第一高を卒業後、警視庁に奉職。同武道専科で佐藤博信範士、太田忠徳範士の指導を受ける。警視庁剣道副主席師範を最後に平成30年定年退職。現在、東京武道館師範、東京修道館師範、小金原正剣会師範など。

現在、石井猛教士が指導している東京武道館の剣道教室では、刃引きを用いての形稽古が行なわれている。

刃引きを握って形稽古を行なうと刀の構造を理解しやすくなる。刀の「鎬」「反り」といった特性、そして刃筋という刀法の重点項目を理解し、自在な操作を身に付ければ剣道の幅が広がる。

「鎬と刃筋を理解するためには刀を知ることが必要」と語る石井教士に、その要点を伺った。

刀を使うと鎬や刃筋への意識が変わる

 剣道は竹刀を媒体として攻め合い、隙を捉えて打つものですが、その原点は刀による斬り合いにあります。攻め合いや、返し・すり上げといった動作は刃筋や鎬と密接なかかわりをもつものです。日本刀を手にもって長さや重さを感じ、その上で反り、刃筋、鎬が理解できると思います。

 私は現在、月に2回東京武道館で剣道教室の指導をしています。こちらには刃引きの大小が15組ありますので、これを無料で貸し出しながら、日本剣道形の稽古を行なっています。小柄な方が多い女性の場合は抜刀・納刀が慣れるまではなかなか難しいようです。よく注意しないと手を切ってしまう恐れもあります。緊張感のある稽古になりますから、その後に行なう竹刀稽古でも自然と背筋が伸び、良い稽古ができます。

「竹刀は刀のように扱え」という教えもあります。しかし、なかなか真剣を所持している人はいません。そのために木刀で代用されることもあります。刀と比べると厚みもありますし重さも違いますが、切れる部分(刃)、鎬、反りも理解できると思います。

 現在は級審査に「木刀による剣道基本技稽古法」が取り入れられ、小学生でも木刀を使用していますが、これは大変良いことだと思います。私も地元の少年指導では「突き技は稽古・試合では高校生になるまでは禁止です」と説明しながら「木刀による剣道基本技稽古法」も指導しています。

 全日本剣道連盟の重点事項の中でも「日本剣道形」「木刀による剣道基本技稽古法」「竹刀稽古法」の位置づけとつながりを踏まえた各々の指導法の充実を図るとしています。

日本剣道形は竹刀稽古法の原点

剣(日本刀)の概念で「刀法の原理」「攻防の理合」「作法の規範」を修得させる

木刀による剣道基本技稽古法は日本剣道形と竹刀稽古法の中継ぎ

  • 木刀を使用して「刀法の原理・理合」「作法の規範」を理解させる
  • 木刀を使用して、竹刀稽古法の基本技術と対人的技能を正しく体得させる。

竹刀稽古法は剣の理法の修錬に基づく気剣体一致の「見事な一本」の追求

竹刀を使用して、剣道具を着装している打突部位へ実際に打突する気剣体一致の「見事な一本」を追求させる。それぞれの稽古にはねらいがあり、そのことをよく理解することが大切です。

日本剣道形で鎬と刃筋を学ぶ



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