インタビュー 実業団剣道

富士フイルムビジネスイノベーション(旧:富士ゼロックス)剣道部の短期集中稽古

2021年5月31日

KENDOJIDAI 2015.5

実業団剣士たちは、ライバルたちよりも一歩抜きんでるために限られた稽古量の中で工夫を凝らしている。強豪富士ゼロックス剣道部の稽古はわずかに週1回2時間。稽古メニューには実戦を想定した内容が凝縮されている。

今回、効果保証の稽古を大公開。ここにあなたの上達のヒントがある。この驚きの稽古を実践せよ。

石川文雄部長。「会社をけん引する存在になってほしい」と、剣道部員たちに期待を寄せた。立教大出身

三木勤監督。現在も、監督自ら基本打ちから稽古に混じって若手に刺激を与えている。中央大出身

上原祐二主将。日本一を手にするため、稽古内容を構築するなど、剣道部のブレーンとして活躍。中央大出身

岩川力選手。次期主将候補・若手のホープとして、これからの活躍に期待がかかる。早稲田大出身

すべてが一本に直結する稽古
自分で工夫して実践する

 富士ゼロックス剣道部は、およそ半世紀の歴史をもつ強豪チーム。昭和63年の全日本実業団大会・関東実業団大会の優勝を皮切りに、これまで数々の優勝・入賞を果たしている。(全日本実業団大会優勝2回入賞9回、関東実業団大会優勝6回入賞9回など)。現在、石川文雄部長、三木勤監督、上原祐二主将らを中心に、およそ75名の部員(全国各地)が在籍している。

 これほどの実績を誇る剣道部だが、部での稽古は、毎週土曜日・海老名事業所体育館(神奈川)で行なわれる週1回2時間のみ(3連休の時には、家族サービスのため稽古休み)。あとは自主稽古にまかされている。

 数々の記録をつくってきた強豪剣道部にしては、意外にも少ない稽古時間であり、驚かされる。しかし、「週1回2時間のみ・あとは各自の稽古で補う」というスタイルは、実は長年変わっていない。これだけの時間で、毎回300チーム以上が出場する実業団大会で実績を残してきたのだ。

 では、富士ゼロックス剣道部が実践している稽古とは具体的にどのようなものか。歴代の選手たちは、限られた時間の中で上達をするために、最大限の効果を得られる稽古内容を考えてきたという。

 現在の稽古内容は、上原主将が中心となって考えられたものだ。

 稽古時間は2時間きっかり。延長することはない。素振り、切り返しから始まり、基本打ち、連続の打ち込み、掛かり稽古、一本勝負、地稽古といった流れになっている。

「すべてが一本を取ることに直結した稽古をめざしています。『基本稽古で一本になる打突を学ぶ→地稽古ではそのかたちが崩れないまま攻めて一本が打てるようにする→試合で試す→試合の内容についてレビューをする→地稽古で復習する』というサイクルをつくるようにしています」(上原主将)

 有功打突の条件「充実した気勢、適正な姿勢をもって竹刀の打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする」を理解し、悪癖は正し、一本にできない理由を考える。

 部員たちは各自が高い意識をもって稽古に励んでいる。2時間きっかりで、さまざまな稽古を行なうため一つ一つの量は少ない。しかし、全てを全力で行なうと、体力的にもとてもハードだ。たとえば、素振りをたった30本行なうだけでも汗が噴き出してくる。実際、2時間の稽古を終えた部員たちは疲労困憊といった印象だった。

「体力面や、技術面の工夫、色々なことを考えて、いまの稽古内容にいきつきました。これ以上時間をかけたとしても、集中力が欠けて、ただこなすだけになりかねないのではないか……、と思います」(上原主将)

 富士ゼロックス剣道部が構築した、いわゆる「大人のための、短期集中稽古法」。この稽古で、彼らはライバルたちに対し一歩、二歩とリードする環境を整えた。

日本一の剣道部になるために
強くて楽しい部をめざした

 剣道部のモットーは「強くて楽しい剣道部」。ここでいう「強くて」は、実業団日本一にふさわしい実力を身に付けるということ。そして「楽しい」には、互いに切磋琢磨することのやりがいや、剣道部の活動を純粋に楽しむ、といった意味がふくまれているのだろう。

「もし、仮に全日本実業団大会で優勝した時、『あれが日本一か』とうしろ指を差されないように、仕事の面においても、私生活の面においても流石は富士ゼロックスの剣道部だ、日本一の剣道部だ、と言われるように活動していきたいと部員といつも話しております」(上原主将)

 2014年度、上原主将が打ち出していたスローガンは「必勝」。仕事をしながらでも、目標である「日本一」を言葉だけで終わらせないために、「勝ち癖をつけること」「稽古回数を増やすこと」「チームワークの向上」「最高のコンディション作り」「スカウト」の5点に重きを置いた。

 部の稽古は週1回のみ。部員たちは各自出稽古や朝稽古、トレーニングでこれを補う。稽古日以外では、コミュニケーションを重ねて、チームワークの強化にもつとめている。

 また、稽古回数や試合結果をデータにまとめ、自分がどれくらい稽古をしているのか、勝率はどうか、負けている時にはどんな技で負けているのか、といったことが数値で客観的に捉えられるようになった。これで、自分が改善すべき点がよりわかりやすくなった。

 目標、スローガン、取り組みなどを明確に打ち出したことで、今何をするべきかも明確にわかってくる。そして、日々、少しずつ上達していけば、より剣道が面白くなってくる。そうやって、部員たちは積極的に稽古に取り組んでいる。

「強くて楽しい、という言葉は『自主性』という言葉にも置き換えられるのではないかと思います。ただ知識をたくわえていくよりも、楽しく取り組んだほうが、物事は上達します。楽しんでやることによって、剣道がより面白くなりますね」(三木監督)

 元気なのは若手だけではない。現役をおりたベテラン勢も、若手とともに基本稽古から稽古をし、部の盛り上げに一役買っている。ベテラン勢が負けじと頑張れば、若手も励まされる。

「私たちは部員たちをバックアップする側ですが、彼らが強くなれるための材料を提供していきたいと考えています」(三木監督)

 部を盛り上げながら、目標の日本一に向かって一丸となって取り組んでいる。

「常に強い気持ちを持って、日頃の稽古に取り組めば、おのずと成果は出ます。業務も剣道も、こつこつ継続して、成果を出して欲しいですね。会社をけん引する剣道人になることを期待しています」(石川部長)

準備運動・素振り―渾身の力で打ち切る

ポイント
・体操から稽古に対する集中力を高めるため、私語を慎む。
・素振りは渾身の力で、一本一本をすべて有効打突にするつもりで打つ。



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