剣道の技

若手剣道家が実践する 面打ちの磨き方 Part1

2021年10月18日

KENDOJIDAI 2021.1

基本の積み重ねが会心の面を生む

髙添政史(山梨)
たかそえ・まさし/昭和53年山梨県生まれ。堀越学園高から亜細亜大に進み、卒業後、山梨県警察を経て、現在、警察大学校術科教養部助教授。全日本選手権出場、全日本東西対抗大会出場、全日本都道府県対抗大会出場など。剣道教士七段

強さ、潔さの体現
理想の面打ちをめざして

「正々堂々の真っ向勝負」、面技と言えば、やはりこの言葉が一番しっくりくるのではないでしょうか。野球でいえば「直球ど真ん中」です。勿論、左右に変化しての打突や応じ技にも妙味を感じますが、積極果敢な仕掛け技で勝負し、自己を表現することが面技の醍醐味であると考えます。自身の修業では、正々堂々の精神を基盤とし、強さ、潔さの体現を目指して修錬しています。

1、大きな声で、大きく振りかぶり、真っ直ぐ打つ

 面は最も隙の多い部位である一方、打突部位の中で最も遠く、正確に打つことが難しい部位と言えます。そのため、約束稽古、打ち込み稽古で一本でも多く数を重ね、大技で基本的な打突の技術を体得することが重要です。

 現在、私は警察大学校で全国の警察官を指導する立場にあります。学生の多くは低段者ですので、必ず示範して、正しい剣道用語を使い、わかりやすく説明することを心掛け、基本動作、仕掛け技を主にした稽古内容です。正面打ちでは「大きな声で、大きく振りかぶり、真っ直ぐ打つ」ことを指導します。指導対象の技量によっては、「腹の底から力強い発声で、頭上に振りかぶり、真っ向に(真正面に)打ち切る」と説明することもあります。シンプルですが、これは打突の基本であり、一貫しての取り組みに尽きると思います。

2、体の安定を重視した基本稽古

 誰しも、なるべく遠間から少しでも速く打ちたいと思うものです。この気持ちが先行すればするほど力みが生じ、体が不安定になります。ややもすると相手の面に届かず、空を切り、自ら崩れてしまいます。また、真正面に打ち込めば体の接触は必然で、相手に弾き飛ばされない、崩れない、終始安定した体の運用を身につけたいと考えています。真っ向勝負を挑むには体の安定が不可欠であることを念頭に、基本稽古では以下のことを留意しています。

・間合を知り、無理のない打突

遠間からの打突を心掛けて稽古することは必要です。しかし、自分の打てる間合、打てない間合を知らずに遠間から打ち込めば、それは逆効果です。自分が一足で無理なく打てる間合を掴むために、ゆったりとした動き出しから一足で打突することを徹底しています。相手との攻防では、いかにして間合に入るかが重要になりますが、まずは稽古の積み重ねにより一足一刀の間合を感じ取り、身体に染み込ませることが大切だと思います。



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