大学剣道 実力を伸ばす稽古法

実力を伸ばす稽古法(日本体育大学)

2022年1月31日

2021.6 KENDOJIDAI

撮影=西口邦彦

剣道指導者を養成する日本体育大学ではどのような稽古を心がけているのだろうか。切り返し、打ち込み、掛かり稽古。常に緊張感をもって取り組むためのポイントを古澤伸晃男子監督、新里知佳野女子監督が紹介する。

編集部注 お二人からうかがった内容を編集部がまとめました。

古澤伸晃教士七段

ふるさわ・のぶあき/昭和56年熊本県生まれ、39歳。阿蘇高校から日本体育大学に進み、卒業後、皇宮警察に奉職。全国警察選手権3位入賞。皇宮警察退職後、日本体育大学大学院を経て、現在は母校日本体育大学スポーツ文化学部武道教育学科准教授、同大学剣道部部長兼男子監督を務める。

新里知佳野教士七段

しんざと・ちかの/昭和57年沖縄県生まれ、38歳。興南高校から日本体育大学に進み、卒業後同大学剣道研究室助手を経て同大学院に進学(大学院進学と同時に新潟県体育協会勤務)。全日本女子選手権2位、世界大会個人3位、全国教職員大会個人2位など。現在、日本体育大学スポ ーツ文化学部武道教育学科准教授、同大学剣道部女子監督を務める。

 剣道の稽古は文字にすると素振り、切り返し、打ち込み稽古、掛かり稽古、互格稽古、指導稽古など初心者から上級者まで稽古内容にほとんど変わりはありません。では、どこで差がつくのか考えてみると、いかに稽古や試合を想定させながら実践に導いていくことが大切であり、同時にその内容における質の高さを徹底して追求していくことが大切になります。そのような稽古環境や意識を整えることが指導者の役割であると考えています。

 本学で行なう稽古の大前提は、剣道指導者になるための理合や技術の習得です。指導者になるためには全日本剣道連盟が呈示している技について、すべてを理解し、示範できなければなりません。理合と実技の両輪が備わってはじめて指導することができます。

 しかしながら、剣道は頭で理解できても、実施することが難しい競技です。それが剣道の魅力でもありますが、稽古をとことん積み重ね、咄嗟の判断で技を使うことが重要になります。

 本学は男子81名、女子31名が在籍し、稽古に取り組んでいます。大所帯での稽古になりますが、部員全員で稽古ができるメリットは技能優秀な学生に引っ張られ、その他の学生が同化していくことです。同じ環境で稽古をすることで観て学び、剣を交えることで自然と剣道の力が付いていきます。それゆえ、指導者は、常に本番を意識した緊張感を稽古開始から終了まで維持することを管理、徹底させなければなりません。

コロナ禍で昨年度はほとんど稽古ができない状況でした。本年3月から活動を再開しましたが、稽古が充分できなかった反動からか、学生たちは意欲的に取り組んでいます。

 大学生活の4年間は、今後の人生を決める重要な時期です。指導者はよき元立ちを務めなければなりませんので、隙のつくり方、打たせ方、体当たりの受け方はもちろんのこと、掛かり手を先導し、息を上げさせることも学ばなければなりません。

 本学が掛かり稽古に重点を置いて取り組んでいるのは、そのためで、まずは掛かり手として身体全体を使って掛かり稽古を繰り返すことで剣道に必要な力が身についてきます。

 掛かり稽古で大切なことは、肉体的にも精神的にも崩れないことです。崩れてしまえば正確な技を出すことはできません。苦しい稽古で自分を崩さずに技を出すことを繰り返すことで、実戦で打突の間合に入って我慢ができるようになったり、迷わずに打突することができるようになります。そうした我慢が新たな機会の発見や技の選択あるいは冴えにつながっていくと考えられます。

 剣道部では本学トレーニングサポートチームと連携し、怪我予防を目的とした体幹トレーニングやストレッチングを行なっています。学生の稽古は負荷が大きく、怪我を負うリスクが常にあります。怪我をしてしまうと、稽古を中断せざるをえず、完治せずに稽古を再開すると、さらに怪我をするという悪循環にも陥りかねません。

 充実した稽古を継続的に行なうためにも、怪我予防は重要な課題ととらえています。

黙想1分、最初の発声から全力で切り返しを行なう



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