上質の基本稽古

上質の基本稽古(鍋山隆弘)

2022年3月28日

KENDOJIDAI 2022.2

素振り、打ち込み、切り返し。平素から基本稽古を地道に繰り返すことが上達の近道と言われているが、その方法に瑕疵があったら一大事。基本稽古は応用につながってこそ基本である。質の高い基本稽古を一流剣道家から学ぶ。

撮影=西口邦彦

「その稽古をするのはなぜか…。常に問いかけ、その目的を明確にすることが必要だと思います」と鍋山教士は言う。稽古の質を上げるためのポイントを鍋山教士が紹介する。

鍋山隆弘教士八段

なべやま・たかひろ/昭和44年生まれ。福岡県出身。今宿少年剣道部で剣道をはじめPL学園高校から筑波大学へと進学。高校時代はインターハイ個人・団体優勝、大学時代は全日本学生優勝大会優勝など輝かしい戦績を残す。卒業後は、同大大学院を経て研究者の道へ。全日本剣道選手権大会10回出場、世界剣道選手権大会出場2回、全国教職員大会優勝など。現在、筑波大学体育系准教授、筑波大学剣道部男子監督として多くの教え子を指導する。

剣道は相対動作
こちらの意図を伝える

 剣道の稽古は素振り、切り返し、打ち込み、掛かり稽古、地稽古と言葉で表現すると初級者から上級者まで行なうことに大差はありません。しかし、錬度に応じて身につける内容があり、そこに向かって修錬していくことが上達につながると考えています。

 筑波大学剣道部の学生は三段を保有して入学してきます。三段の付与基準は「剣道の基本を修錬し、技倆優なる者」であり、在学中に取得する四段は「剣道の基本と応用を修熟し、技倆優良なる者」です。〝応用〟を修錬することになるのですが、相手の意図を感じ取りながら打突の機会を捉える事がより重要となります。そこで基本稽古から部員には「相手にどうしてもらいたいのか。相手を居つかせたいのか、または手元を上げさせ、防御態勢をとらせたいのかなど、明確にこちらの意図を伝えることを意識しなさい」と指導しています。

 ただし、応用は基礎が土台になければ効果的に使うことができません。1年生には左足で床をつかみ、まっすぐな面打ちを繰り返して、土台をつくることも行なっています。

 わたしはPL学園に在籍していた高校時代、恩師川上岑志先生から「まっすぐが一番早い」ということを徹底して叩き込まれました。相手が届かない間合から打つことができれば、物理的にも優位に立てます。脚力は加齢とともに衰えますが、左足を継がずに一拍子で打つことの重要性は周知の通りです。

左胴(逆胴)の稽古
あらゆる準備を怠らない



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