攻め

起こりをとらえて打て(伊藤陽文)

2022年6月20日

2021.8 KENDOJIDAI

撮影=西口邦彦、笹井タカマサ

起こりをとらえるにはどうすればよいか。
「相手に動作の起こり・心の起こりを起こさせなければいけない」と伊藤範士は語る。
起こりをとらえるためには、その過程を研究することが必要だ。

伊藤陽文範士

いとう・はるふみ/昭和16年東京都生まれ。鎌倉学園高から拓殖大を経て神奈川県警察に奉職。全国警察大会をはじめ、国体や全日本東西対抗大会、明治村大会で活躍。昭和53年、神奈川県横須賀市の自宅に陽武館伊藤道場を創設し、現在に至るまで館長として剣道指導にあたる。

 起こりは、素晴らしい打突の機会の一つです。相手が出てくるところを鮮やかに打つことに憧れをいだく方も多いでしょう。しかし起こりを打つためには、打つことよりも前の段階に注目しなくてはなりません。

 まず、起こりをとらえる前段として「攻め」が大切です。攻めがないことには、心の起こりも動作の起こりもありません。

 攻めには「気攻め」「剣攻め」「体攻め」の3つがあります。相手とのやり取りにおいてはこの3つの攻めを有効に使い「その攻めに対し相手がどのように反応するか」を見極めないといけません。

 そこが非常に難しいところです。そこで、三つの許さぬところ「起こり頭」「受け止めたところ」「技の尽きたところ」を考えながら研究する必要があります。さらに言えば、三つの隙「構えの隙」「心の隙」「動作の隙」についての理解も必要です。

 三つの隙のうちの「構えの隙」「心の隙」については、自らが隙を見せないようにすれば相手から打たれることはありません。しかし動作の隙については、技を打つ際には必ず出てくるものです。ここをなるべく相手にさとらせず、打たせない工夫が必要です。

 逆に打つ方からいくと、動作の隙はカバーすることができません。そこを狙い、起こりを打つことにつなげるわけです。

 打とうの「う」を打て、という言葉もあります。そうすると、相手が打ってきた瞬間をとらえることができます。しっかり攻めて相手の動作の隙・心の隙を作り、その瞬間を打突することです。

 そのためには経験を積み、どう攻めたら相手がどんな動作を起こすのか、予測をしなくてはいけません。

 こうした攻め合いを考えた場合、「起こり」というのは単なる動作を指すだけではないことが、よくわかると思います。攻めを考えず、「動いたところを打つ」のであれば、単なるスピード勝負になってしまいます。

 攻め合いの中で相手が「来る」と予測してたら、その通りに相手が出てきて手元が上がり、一本が決まったとします。その場合は、予測した分早く動けているので、最も短い時間で相手を捉えることができているでしょう。それが、最高の起こりの打ち方ではないでしょうか。

相手の起こりを誘発するための工夫



残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます

ログイン

or

登録

登録


Subscribe by:

You Might Also Like

No Comments

Leave a Reply