インタビュー

若手剣士が実践する、仕掛ける技術

2024年1月1日

2023.11 KENDOJIDAI

掛かる稽古から学んだ仕掛け技

小川維斗(熊本)
おがわ・つなと/昭和55年熊本県熊本市生まれ。八代東高から国士舘大に進み、卒業後熊本県警察に奉職。全日本選手権出場、国体出場、全日本都道府県対抗大会出場、全国警察大会団体2部3位3部優勝など。剣道錬士七段

「仕掛け技」についての技術や考え方は、これまで先生方との稽古で多くの学びをいただいてきました。私の中で、印象にある先生方との稽古や心がけてきたことを、ご紹介したいと思います。

 八代東高校時代には、当時監督をされていた右田幸次郎先生に毎日稽古をつけていただいていました。当時の先生は、前へ前へと攻め入られる剣道で、おそらく剣道を行われている方なら経験されたことがあるかもしれませんが、構えを崩されない強い先生を前に怖くて技を出せず、知らず知らずのうちに後ろへ下がってしまい、結局自分が何もすることができない、そのような稽古でした。

 私は、どのようにすれば先生に技を出せるのだろうと考え、単純で恥ずかしい考えですが「先生が構えを崩されずに前へ出てこられるなら、先生の竹刀を折るぐらいの気持ちで思い切り打ち込んで先生にぶつかっていこう」と考えました。それからは打たれても、突かれても怖がらずに前に出て先生より先に仕掛ける稽古を行うようにしました。今考えれば、この稽古から仕掛け技に大切な早い入りなどの技術的な部分や、怖さを乗り越えて前に出る精神的な部分を教えていただいたように思えます。

 その結果、高校時代は、試合でも怖がらずに自分から仕掛けて技を出すことが自然に身についたと思います。

 また、国士舘大学時代には、周りを見ればとてつもなく強い先輩ばかりで、地稽古では技を仕掛ける暇もなく、毎日ついて行くので精一杯でした。先生や先輩方との稽古では、目一杯早い仕掛けとスピードで「絶対に面を打った」つもりでしたが、結果は、その合間に胴を右、左、右と3回ほど頂戴しました。「なぜ?」と毎日考え、自分の力のなさを痛感し、自分が心がけてきた剣道の姿を見失っていました。しかも当時の私は、強い先輩の見かけだけを真似し、攻めも、打突もせずただ構え、機会を探るだけの剣道をしていました。

 そのような中、大学1年生のある日先生に稽古をお願いした時、いつものように構え機会ばかりを意識し先生に一本も打てずにいると、「掛かってくるんだよ!打つんだ」と、一喝。稽古後、先生から、「体が動くうちは動ける剣道を行い、その中から学ばなければならないことが多くある」とご指導をいただきました。

 その言葉で、「私の心がけていた剣道は相手に掛かる気持ちを常に持ち、前に前に出て捨て身の技を出す剣道」だったことを思い出しました。

 剣道において打つべき機会を捉えて打突することは大切なことですが、機会ばかり気にしていたのでは、打突することなどできません。

 それからは、先輩や後輩、もちろん先生方に稽古をお願いするときは、自分から掛かる稽古を意識しました。

 掛かる剣道を行えば、打たれる、突かれるという臆病な気持ちではなく、自分が打って、突いてやるという気持ちの方がおのずと強くなります。

 その結果、掛かる気持ちが、仕掛けることになり、そして「気攻め」につながるのではないかと思います。後は思いきり「捨て身で技を出す」。私の場合は、この考えを軸に剣道を行い、その後に仕掛けて我慢することなどについても考えるようになったと思います。

 剣道において、自分自身と相手を観察し、心や動きを読み相手を自分の思うように動かし、打つべき機会を捉えて打突することはとても大切なことです。

 しかし、私の場合はあまり難しく考えずに少し我がままに、自分が何を打ちたいのかをまず考え、その上で突かれても、打たれても前に出て技を出すために仕掛けていく所に学びがありました。そこから剣道の幅が広がる部分が多くありました。

 最後に、剣道は多くの先生方のお考えがあり、様々な年代に対する稽古法やお考えがありますので、あくまでも私の経験として考えていただけたらと思います。

上下、表裏を意識した仕掛け技



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