構え

最高の構え、最高の一本(島村剛史)

2024年2月12日

2024.1 KENDOJIDAI

構成=寺岡智之
撮影=西口邦彦

現在、警視庁剣道師範として後進の育成に励む島村剛史教士は、構えに関して強いこだわりを持ち続けてきたそうだ。「構えには身構えと心構えがあり、その二つが備わってこそ、誰もが認める打ち切った打突につながっていくと思います」。島村教士の構えのこだわりや打突へのつながりについて、これまでの経験をもとに語ってもらった―。

島村剛史 教士八段

しまむら・つよし/昭和49年生まれ、神奈川県出身。東海大相模高校から警視庁に奉職。主な戦績として、寛仁親王杯八段選抜大会2位、全日本選手権大会出場、全日本都道府県対抗大会出場、国体優勝、全国警察大会団体・個人優勝などがある。現在は警視庁剣道師範として、後進の育成に務める

幼きころに抱いた警視庁への憧れ
正しく構えることこそ勝利への道

 私は構えに関しては、幼いころからこだわりを持っていました。警視庁を志した理由も、警視庁の王道と言われる剣道に、強く憧れを抱いたからです。

 憧れの発端は、小学生のときに当時通っていた道場の先生と全日本選手権を観に行ったことでした。その大会で優勝されたのが、のちに警視庁の主席師範を務められる西川清紀先生です。道場の先生から「お前は身体が大きいのだから、西川選手のような大きな剣道を真似しなさい」と言われたのは、今でも鮮明に記憶に残っています。その後、西川先生とはある道場主催の大会で実際にお会いすることになり、私がその大会で優勝したこともあって、一緒に記念写真を撮っていただきました。小学校の卒業文集にも「警視庁に行きたい」と書いたくらい憧れは強く、警視庁のきれいで強く正しい剣道は、私の剣道の根幹ともなっています。

 実際に警視庁に奉職してみると、西川先生をはじめ、なぜ警視庁の先生方がみな立ち姿のきれいな剣道をされているかが分かってきました。先生方に共通しているのは崩れのない構えです。こちらがいくらスピードやパワーにまかせて打とうとしても、まったく剣先が届きません。攻め合いで中心をとられ、気づいたときには打たれているわけです。この経験を

繰り返しているうちに、自分もそうあるべきだと思い、さらに構えについて意識をするようになりました。みな、このような経験を経て、「警視庁らしい」と言われる正しい剣道に行き着くのだと思います。

 試合で勝つことを求めた現役時代を振り返ると、構えや体勢を崩してでも打とうとすることはもちろんありました。しかし、30歳を超えたあたりから、それは遠回りをしているのではないかと気づいたわけです。私が打たれるときは、そのほとんどが左拳を上げて、いわゆる三所避けのような状態から打っていったときでした。勝ちを求めて崩れたところから打つのではなく、勝つためにも構えを崩さないことをまず考える。このように意識が変化してからは、さらに正しい構えから打突することを考えるようになっていきました。

コロナ禍で励行した打ち込み稽古
心構えが重要だと気づいた



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