足と有効打突

左足は剣道の根幹だ(亀井 徹)

2024年9月23日

2024.10 KENDOJIDAI

撮影=西口邦彦、杉能信介

「左足が緩むと正確に技を出すことはできません」と亀井範士は強調する。左足を常に機能する体さばきを身につけるには素振り、打ち込み、切り返しから常に左足を意識しておくこと。亀井範士が心がけていること、指導していることをお聞きした。

亀井 徹(範士八段)

かめい・とおる/昭和29年熊本県生まれ。九州学院高校から明治大学に進み、卒業後、熊本県警察に奉職する。熊本県警察首席師範を最後に退職。主な実績として全日本選手権大会2位、世界剣道選手権大会出場、全日本都道府県対抗大会出場、全日本東西対抗出場、全国警察大会一部優勝、国体優勝、全日本選抜八段優勝大会2位3位、剣豪「丸目蔵人」顕彰全日本選抜剣道七段選手権大会優勝2回、岩手県知事杯剣道七段大会優勝3回などがある。著書に『剣道昇段審査対策21講』(小社刊)。剣道範士八段。株式会社シオザワ剣道部師範。

審査員は左足・左拳を見ている

 全日本剣道連盟発行『講習会資料』にも記されているように、剣道の技術習得に欠かせないのは一拍子の打突です。一拍子とは淀みなく打つことです。面打ちを例とすると、構えて、竹刀を振り上げて振り下ろし、その際、並行して右足も上げ下げする、これだけのことです。もちろん応用の打ちもありますが、基本は一拍子の面で、それが小手になるか、胴になるか、突きになるかの違いです。

 ところが今、指導をする際、「基本の面打ちをやってください」とお願いすると、ほとんどの人がまず左足を引きつけてから右足を前に出して打ちます。剣道には左足を寄せて打つ継ぎ足という技術も確かにあります。しかし、継ぎ足は間合が遠いときに用いるものであり、届く距離であれば、左足を動かさずに、そのまま淀みなく打つことが求められます。

 昇段審査はその段位にふさわしい剣道が身についているかを評価するものであり、段位にふさわしい姿勢態度・攻め・打突などを総合的に判断します。その大本となるのが一拍子の打突です。

 審査員は椅子に座り、受審者の立合を横から見ています。開始線の間合から触刃の間合、交刃の間合、一足一刀の間合へと詰まっていきますが、そこで左足が崩れると攻めが効きません。瞬時に打ち込むには左足に体重が乗っていることは大切ですが、後傾しすぎると淀みなく技を出すことが難しくなります。打ちたい気持ちが強くなると、右足だけを出してしまい、足幅が広がりすぎることもあります。左足が崩れると、竹刀の握りも変わってしまうこともあります。

 足幅が広がり過ぎると手足を一致させた技が出しにくくなります。硬さやぎこちなさは、手足の不一致から生じるものであり、右足右手前に構える剣道は、通常歩行にはない動きなので意識して稽古をしないと身につきません。左足を軸足とし、踏み込み足を繰り返すことでリズムを覚えることができます。

 簡単なことですが、加齢とともに身体が硬くなり、どうしても動きにぎこちなさが生じます。稽古が始まる前などに面打ち、小手打ち、小手面打ちなど空間打突をコツコツと繰り返すことで、自然な打ち方が身につくはずです。

相手との間合は左足で計る



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