2024.8 KENDOJIDAI
撮影=西口邦彦
構成=寺岡智之
先に行なわれた第72回全日本都道府県対抗優勝大会において、東京チームの大将として優勝を勝ち取った島村剛史教士。端正な構えから機をみて捨て切るその剣道は、会場でも一際目を惹く存在感を放っていた。「構えを有効打突につながる意味のあるものにするためには、実と実のやりとりを意識するべきだと思います」。
そう話す島村教士に、活きた構えを身につけるための方法論について語ってもらった―。
島村剛史 教士八段
しまむら・つよし/昭和49年生まれ、神奈川県出身。東海大相模高校から警視庁に奉職。主な戦績として、寛仁親王杯八段選抜大会2位、全日本選手権大会出場、全日本都道府県対抗大会優勝、国体優勝、全国警察大会団体・個人優勝などがある。現在は警視庁剣道師範として、後進の育成に務める
身構えと気構えを備えてこそ
構えは活きたものになる
構えを活きたものにすることや剣先に力を宿すことは、50歳を過ぎた私にとっても非常に難しく、今後の修行で身につけていかなければならないものだと考えています。まだ修行の過程であることをご留意いただく中で、現時点での私の考え方が少しでもご参考になれば幸いです。
構えには目に見える「身構え」と、目に見えない「気構え」があると思います。身構えに関しては基本の構え方を遵守しつつ、誰が見ても綺麗で素晴らしいと思えるような構えを目指しています。ただ、構えというものは見た目だけでなく、内実が伴ってこそ、その効果が発揮されるものだと考えています。どんな状況下においても瞬時に打ち出せる、あるいは相手の動きに対処できる構えでなければならず、そのためには、左手・左腰・左足といった左半身を意識することが非常に重要であると感じています。
気構えについては、私は東海大相模高校時代にご指導いただいた木田誠一先生の言葉を、今でも修行の道標としています。
〝気は大納言の如く 身は足軽の如し〟
これは、身軽に動ける、いつでも打ち出せる体勢を維持しておきながら、大納言のような気持ちで小細工なしに相手と対しなさいという意味だと私はとらえています。当時の稽古を思い返せば、とにかく大きく竹刀を振って大技で勝負しなさいと言われ、細かいテクニック的な指導はほとんどありませんでした。この指導が不器用だった私には性に合っていたのでしょう。前に出る技を意識して稽古や試合に取り組んだ結果、今につながる剣道が身についていったと思います。
高校卒業後、警視庁にお世話になってからはさらに構えについて考えることが多くなりました。その理由は、稽古をいただく先生方の気位を日々感じていたからです。気位とは鍛錬を積み重ねたことによる自信から発せられる威力威風のことで、警視庁の先生方はみな、構え合うだけで怖くなるような気位を備えておられました。なぜこのような剣道が実践できるのか、その理由が警視庁の猛稽古にあることは、特練員に指名されたことですぐに理解できました。
警視庁剣道特練では、まず素振りや足さばきといった基礎基本を徹底して鍛えます。手の感覚がなくなるまで木刀や竹刀を振り続けることで、自分の構えや手の内が分かってくる、そうご指導いただきました。よく「警視庁らしい剣道」というような表現を耳にしますが、これはこのような基礎基本の徹底を通して、みなが正しく強い剣道を身につけていくからだと思います。構えについても、気迫や威圧感といったものが自然と備わっていきました。
観の目で相手をとらえることで、実の動きが見えてくるようになる
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