2026.3 KENDOJIDAI
撮影=西口邦彦
インタビュー=吉成正大
全日本剣道選手権大会優勝6回、全国警察剣道選手権大会優勝6回、世界剣道選手権大会団体優勝4回・個人優勝など前人未到の記録を打ち続けた宮崎正裕範士八段(神奈川県警察剣道名誉師範)が剣道歴50数年、これまで取り組んできた工夫と実践、思考をあますことなく紹介する。
宮崎正裕

怪我をすれば長期離脱は必至。準備運動を入念に行なう
ー宮崎先生は神奈川県警察学校卒業後、昭和58年に神奈川県警察剣道特練員を拝命されてから日本一をめざす選手生活が始まりました。日々の稽古では具体的にどのような気持ちで取り組まれてきたのでしょうか。
稽古は「初太刀がすべて」と考え、最初から100パーセントの力を発揮できることを常に心がけています。身体ができていなければそれができませんので準備運動から真剣に取り組むようにしていました。
準備運動の目的は、怪我をしない身体をつくることが第一ですが、それと同じくらい大事なことは動ける身体をつくることです。この二つを考えて、取り組んでいました。
準備運動も自分の到達点があります。夏は準備運動で発汗するくらい、冬は身体があたたまるまで取り組みました。そういう気持ちで取り組んでいますので、指導者になってから準備運動の必要性、重要性を常に言い続けています。
我々の特練員時代、準備運動があっても整理運動がない時代でした。いまはトレーナーの先生方に専門的に指導を受ける機会がありますが、そのような機会はありませんでした。
剣道特練の監督に就任してからは指導稽古終了後、先生方からご指導をいただいたあとはすみやかに整理運動を行ない、シャワーを浴びるように指示していました。稽古終了後は一息できるのでややもすると特練員同士で会話に夢中になってしまいがちですが、それを続けることで身体が冷えてしまいます。雑談はシャワーを浴びたあとです。自己管理を徹底することも剣道特練員には大切なことです。これは生活面とつながっています。
我々の時代はストレッチングもありませんでした。いま考えるとよく怪我なく続けられたと思うのですが、準備運動だけは特練員時代からしっかりと行なうようにしていました。アキレス腱を伸ばすことはもちろん四肢をほぐして万全な身体で稽古に臨むようにしていました。若い頃はおかげさまで膝や肘の故障もなく、とくにアキレス腱断裂等、足の怪我には細心の注意を払っていました。というのも日頃、稽古では〝跳ぶ〟ということを意識していたので、どうしても左足に負担がかかっていました。遠間から跳んでいくことをひとつの武器としていましたので、アキレス腱を痛めてしまうと長期離脱はもちろんのこと、本来の剣道ができなくなってしまいます。
それゆえ準備運動のときにはアキレス腱の運動を念入りに行なうようにしていました。指導者となったいまも「アキレス腱を伸ばしなさい」は口癖になっています。全剣連の強化でも掛かり稽古前や待っている時間にもアキレス腱を伸ばさせるようにしていました。
そのおかげなのか特練員時代にアキレス腱等を痛めたことは一度もなく、19年間、選手生活を続けることができました。準備運動はとても大切なことであり、私は今でも準備運動の時間が確保できないときは、稽古をしたい気持ちをぐっと我慢して、見取り稽古に終始するようにしています。
素振りで理想の形を覚え、その形で打突部位を打ち込む
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