稽古方法 素振り

素振り徹底(中村福義)

2020年8月3日

2020.7 KENDOJIDAI

「実戦で役立つ素振りをするには必ず一拍子で振ることです」と中村館長は強調する。それには瞬時に打突できる構えをつくらなければならない。実戦に直結する素振りをするための留意点を紹介する。

中村福義(なかむら・ふくよし)教士八段

昭和23年東京都生まれ。開館102周年を迎える東京修道館三代目として、祖父中村彦太、父中村鶴治の指導により、4歳の頃より剣道の手ほどきを受ける。慶應義塾志木高校から慶應義義塾大学に進み、卒業後は東急不動産勤務、その後、独立して事業家としても活躍。現在は館長として日夜、後進の指導にあたる。東京都剣道道場連盟会長、元慶應義塾大学剣道部監督。

剣道を始めてから70年が経とうとしています。年齢を重ねるごとに素振りが重要な稽古であることを認識するようになりました。剣道は攻めて崩して、そこに生まれた隙をとらえるものですが、会心の一本を打つには、姿勢を崩さずに打たなければなりません。

とくに六段以上は指導者としての役割が期待され、審査は勝負の歩合とともに段位にふさわしい基礎・基本ができているかも評価されます。その基礎・基本を学ぶ上で必要不可欠なのが素振りです。素振りで正しい振り方や体の運用などを身につけ、竹刀稽古につなげていくことが大切です。

修道館では面を着ける前に足さばきと素振りの稽古を必ず行なっています。単なる準備運動ではなく、一本につながる足さばき、素振りを意識するように指導しています。昇段審査では剣道具をつけて十分にウォーミングアップをする時間をとれることは少ないので、素振りだけで準備が整うような振り方をするように求めています。

いつでも打てる構えをつくる

構えで意識したいことは、左脇を締めて左拳を左腰に乗せる感覚です。左拳を左腰に乗せる感覚で構えると、重心は左足に乗っているので相手の起こりに瞬時に対応できます。

打ち気が強くなると右足に重心が乗り、右拳が右膝に乗った右半身の構えになってしまいます。このような構えでは一拍子で打つことができません。

肩と腕の力を抜き、左脇を軽く締めます。臍下丹田に力を込め、相手を想定して上から乗る気構えで、大きく構えることを意識します。臍下丹田は腹式呼吸で息を吐いたとき、臍裏付近に力が入ると思うのですが、そのあたりを意識します。

竹刀の握り方について、親指と人差し指でできるⅤ字は左右とも真上に向いています。左手親指の第一関節が臍前一握りの位置です。左拳を臍前にもってくると左拳が入り過ぎてしまいます。左手の小指は柄頭に半がけ、握りは小指、薬指、中指で締め、人差し指、親指は包むように竹刀を支えます。

右肘は余裕をもたせて突っ張らないことです。右手は手のひら全体で柔らかく握り、なかで竹刀がまわるくらいの強度で握ります。

また、左足に重心を乗せた構えをつくるには、足構えが重要です。右足の踵は僅かに浮かせ(紙1枚程度)、左足の踵は指1本から2本程度浮かせます。それ以上、踵を浮かせると膝が折れてしまいます。両足の内側を絞り、足裏で床をつかむ気持ちで構えると下半身が充実し、上虚下実の構えになります。この構えを常に維持するようにします。

左拳を左腰に乗せる感覚で構える

親指と人差し指でできるⅤ字は左右とも真上に向くように握る

左手の小指は柄頭に半がけ。半がけにしないと片手突きが出せない

左踵は指1本から2本、右踵は紙1枚程度浮かせると常に打てる構えになる



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