中心 剣道の技

中心を制す、 会心の一本を決める(大城戸 知)

2020年10月5日

2020.3 KENDOJIDAI

現在、全国警察大会1部で目下4連覇中の最強集団・大阪府警察のキャプテンをつとめる大城戸選手。10年以上に及ぶ特練生活の中で、正中線を制すことについて勉強すること多々あったという。その経験談をもとに、相手の状態や状況といった要素を含めた、 「より有効的な中心の取り方の工夫」についてうかがった。

大城戸 知錬士六段

おおきど・さとる/昭和59年愛媛県生まれ、35歳。新田高校から鹿屋体育大学に進み、卒業後大阪府警察に奉職。全国警察大会団体1部優勝個人優勝、世界大会団体優勝個人出場、全日本選手権出場など。現在、同警察剣道特練主将。剣道錬士六段

相手の状態、 状況を把握して中心を取る

誰しもが最初の頃に習う「中心を攻めて、一拍子で面を打つ」は、まさに相手の中心を奪って打つ、基本的かつ理想的な打ち方だと思います。この時の中段の構えは「左拳は下腹部臍前より約ひと握り前に絞りさげた状態に位置する。左手親指の付け根の関節が臍の高さ、左拳は臍より少し低い位置になるようにする」「剣先は、その延長が相手の両眼の中央、または左目の方向を向くようにする」とあるように、正中線上に自分の剣先・拳がおさまっている状態になっています。

基本的にはこの構えの教えが大切であると思いますが、特練(特別訓練員)となって十年以上が経ち、その経験の中で中心を取ることに対する意識にひとつの変化、応用的な考え方をするようになりました。というのも、相手の状態(体格、構え方、剣先の位置、体勢)や状況(攻められているのか、攻めているのかなど)によって、有効的な中心の取り方ということも考えないといけないのではないか、と感じたからです。

そう考えるようになったきっかけのひとつが、2016年の全国警察大会(団体戦・1部決勝・対神奈川県警察)でした。副将戦で勝見選手(洋介・鹿屋体育大学の2期後輩)と対戦したのですが、試合の前半、強く攻め入ってきた勝見選手に対し、上から乗るように中心を取ったつもりだったのですが、下から小手を打たれました(その後、大城戸錬士は面二本取返して優勝に貢献している) 。

2016年、全国警察大会にて

このことは、私にとって「中心」とは? とあらためて考える機会になりました。あの時の私は、正中線上に竹刀を置いた「つもり」でした。しかし、私は比較的大柄でもともと左拳の位置や剣先が高めにあり、かつ、勝見選手は下から攻めて来ていました。この様な条件下であったため、勝見選手から見れば小手を打つための空間(打ち間)が出来ていて、かつ中心を取っていたため、小手を決められるべくして決められた状況が出来上がっていたのだと思います。

たとえば、下攻めや表・裏からの攻めなど得意な攻め方は人それぞれです。対戦相手はその都度変わるのに、いつも同じ位置に竹刀を置くことのみを意識するのでは、何かが足りないのではないか、ということです。つまり、空間(打ち間や間合)と中心の関係を考えていくことが、中心を攻める上で大切ではないかと思います。ここの関係を的確に認識できれば、相手に対し有効な中心の攻め方ができるのではないかと思います。

私が主な目標としているのは、警察大会(全国警察大会団体・個人)や各種全国大会です。そこで対戦する選手は若い二十歳代、三十歳代の選手が多く、動きや試合展開も早いため、色々な状況が生まれます。そのような試合展開に対応するには、順応した柔らかい考え方、剣道が必要ではないかと思います。

対応力のある中心の取り方とは



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