剣道の技 攻め

三つの隙をとらえて打て(八木沢 誠)

2023年2月13日

2022.10 KENDOJIDAI

「打突を成功させるには『捉える』という心理学的な要素が介在し、重要な役割を担っていることを理解することが大切です」と八木沢教士は強調する。相手の心理を正確に捉えることで会心の一本が生まれる

八木沢 誠教士八段

やぎさわ・まこと/昭和36年秋田県生まれ。秋田商業高校から日本体育大学に進む。同大学院修了後、助手として大学で研究活動を続ける。現在、日本体育大学副学長、教授、同大学剣道部師範。

〝捉える〟という要素を意識して稽古をする重要性

 全日本剣道連盟(以後「全剣連」と略す)ではその技術動作の構造を理論的に整理し、「基本打突の技術的要素」に関して、「剣道の打突動作を運動学的に捉えると、『構え』→『攻め』→『打突』→『残心』の一連の動作が完結することにより、その内容が有効打突として評価される」と説明しています。

 実際の場面においては、一連の動作の中で打突をより確実に行なうためには、互いに攻防を展開する中でわずかな隙を捉えて(或いは予測をして)瞬間的な打突をしなければなりません。よって、一方的に攻めたと思って(感じて)打突するのではなく、相手の心身の状態を正確に捉えた上で技を出す必要性があると考えなければなりません。

 つまり打突技術を構築する要素には全剣連の言う4つの運動学的要素に加え、「攻め」から「打突」の間に「捉える」といった心理学的な要素が介在し、重要な役割を担っていることを理解しなければなりません。そして「攻め」「捉える」「打突」を正確に行なうには、自由自在に竹刀操作ができなければならないのは周知のとおりです。

 剣道を長く続け、その面白さ、奥深さを体験するには「相手との相互作用の中で打突の機会は生じる」と理解すべきです。勝つためには、相手と気を合わさないことも戦術として必要なときもあるかもしれませんが、それは奇襲的な意味が強く、剣道修錬の方向性として評価されるものではありません。

 とくに剣道の習熟度を測る昇段審査においては、段位にふさわしい剣道が身についているかを見られるので、奇襲的な技が評価されにくくなります。

 剣道における三つの隙は「構えの隙」「動作の隙」「心の隙」です。普段の稽古から正確に隙を捉えることを心がけることで剣道の内容が変わってくると考えています。

 剣道は対人競技であり、相手あってのものです。それゆえ後味の良い稽古、また悪い稽古というものがありますが、後味の良い稽古をするには〝捉える〟という言葉がキーワードになると思います。

 相手の心理や機会を捉えることを目指し、合気となった稽古では、たとえ打たれても、稽古後に清々しさを覚えます。逆の場合は自分が打ったとしても、また相手に打たれたとしても、後味の悪い稽古になります。お互いに稽古して良かったなと思える稽古をすることが、剣道上達の条件になると考えています。

構えの変化を隙として捉え、打突の機会につなげる



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