インタビュー

第6回横浜七段戦優勝インタビュー(髙鍋進)

2020年11月2日

高鍋進(たかなべ・すすむ)

昭和51年熊本県生まれ。PL学園高から筑波大に進み、卒業後神奈川県警察に奉職。全日本選手権優勝、世界大会団体優勝個人優勝、全国警察大会団体1部優勝個人優勝、横浜七段戦優勝など。剣道教士七段。

勝ちへのこだわりを捨ていつもの自分を心がけた

試合において「ここで勝たなければいけない」という時がある。その土壇場で無類の勝負強さを発揮する髙鍋選手。大事な場面で会場にいる人々に「圧倒的な強さ」を見せつけてくれるのだから、さすがと言わざるを得ない。6回目を迎えた横浜七段戦で3年ぶり3回目の復活優勝を果たした。第2・3回大会で優勝したその後、4回大会、5回大会で上位進出はならなかった。2大会での反省から、今回は「自然体」を心がけたという。「過去2大会では『絶対に一本取らないといけない』 『リーグ戦は負けてはいけない』といった気持ちにとらわれていたところがあったので、そうした気持ちを捨てて、 『自然体』を心がけてきました」

いつも通りの自分でいることを大切にしたという。それが、危機を乗り越えるきっかけになったのかもしれない。予選リーグ緒戦、東永幸浩選手に引き面で敗れ、いきなりのピンチを迎えた。予選リーグは1勝、1敗が勝ち上がりに大きな影響をもたらす。さきに1敗したことで、残り2試合をいずれも勝たなければ、自力で勝ち上がるのが難しくなった。ここで髙鍋選手の心に火が付いた。「ここ数年は、あまり試合の経験がなかったことも影響したかもしれません。気を抜いたわけではありませんが、反応できませんでした。この試合のあと、勝つしかないという気持ちになれたのが、結果論ですが、いい影響をもたらしたのだと思います」絶対勝たなければいけないという正念場。普通だったら「勝たないと」というプレッシャーが余計な緊張を生むところだが、その心配は無用だった。

外山浩規選手、松脇伸介選手に二本勝ち。リーグ1位で決勝トーナメントに進出し、準々決勝で古川耕輔選手、準決勝で若生大輔選手を破って決勝進出した。今回心がけていた「自然体」が、土壇場で活かされていた。「 (どの相手も)守ろうとして守れる相  手ではないですし、 『もし』の話ですが、一本を先にとってから守ろうとして一本取り返されたら後悔しますから」決勝戦の相手は、世界大会でチームメイトでもあった内村良一選手。

前々回、前回の反省を生かし「絶対に勝ちたい」というこだわりから脱却し、自然体を心がけてきたという髙鍋選手。明鏡止水の心境が、土壇場での捨て身の一本につながった。

「内村選手は、特練員を退いてなお全日本選手権や全国警察選手権で決勝進出を果たしています。すごい選手であるということはもちろんわかっていますし、意識をしないといえば嘘になります。私は特練員を離れて7年経過していますし、後輩と試合をする、というよりも『今活躍している内村選手に対して、自分がどれだけできるか』 、という挑戦のような気持がありました。もちろん、構え合ったらそのような意識もなくなり、一選手として対峙していったような気がします」

開始直後の初太刀から捨て身で面に跳び込んだ。惜しくも一本にならなかったが、捨て切った技に観客は魅了された。

「準々決勝と準決勝で、内村選手は返し胴を決めているんですね。普通だったら警戒して面には跳ばないと思いますが、体が自然と反応して出ていました」その後、試合開始からおよそ2分に試合が動く。前へ前へと攻めていく髙鍋選手に攻め返そうとした内村選手のその動きばなに、電光石火の小手が打ち込まれた。「自然と動きました。もう1回打てと言われても、打てるとは思えません。たまたま、面を警戒していたところを打ったのか……。今回はそうした気持ちの持ち方の部分が、良かったのではないかと思います」自然体を心がけてきた成果がいかんなく発揮された。

2大会の反省を教訓に自然体を意識した



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