蒔田 実の剣道授業

蒔田 実の剣道授業 :2時限目 攻めと打突を連動させる

2020年11月23日

2009.01 KENDOJIDAI

昭和59年、国際武道大学の開学と同時に助教授として赴任。現在、同校の副学長をつとめる蒔田実教士。剣道指導者を養成する専門大学の指導者として教壇に立ち、教え子は寺本将司選手(第55回全日本選手権大会優勝)、若生大輔選手(第56回全日本選手権大会準優勝)など平成の剣道界で活躍している。

競技者としても世界選手権大会優勝、全剣連設立50周年記念八段選抜優勝大会で準優勝を果たすなど輝かしい実績を残す。その蒔田教師が指導体験、競技体験のすべてを伝える。

1時限目 剣道稽古の目的
2時限目 攻めと打突を連動させる
3時限目 仕かけ技を身につける
4時限目 応じ技を身につける
5時限目 素振りを実戦に直結させる
6時限目 昇段審査の心得

蒔田 実(まきた・みのる)

昭和23年大阪府生まれ、PL学園高から東海大に進み、卒業後、日本運送(現フットワークエクスプレス)に入社。昭和59年の国際武道大学開学と同時に同校の助教授となる。世界選手権大会個人優勝、全剣連設立50周年記念全日本選抜八段優勝大会2位、全日本選手権大会、全日本東西対抗、国体などに出場。現在、国際武道大学副学長、剣道部師範、剣道教士八段。

2時限目:攻めと打突を連動させる
攻めながら、ためながら、打ち切る

打突動作は現在進行形
三つの動作を連動させる

一本を打つ過程には必ず攻めが存在しています。攻撃力をつけるためには、まず攻めそのものを理解しなければいけません。「自分から攻め入り、同時に剣先を開かせる、上げる、下げるといった構えの崩れた瞬間を打つ」、あるいは「相手を誘い、出 てきたところを打つ」という基本的な攻め方があると思います。 

つまるところ打突の機会は、相手が防御に入ったところ、攻めに耐え切れずに打ってきたところの二種類に集約されることになると思います。攻め方については各人の個性がありますが、最終的には自分の気力を充実させ、それをもって相手を崩すことが大切です。こちらの気持ちに圧され、相手が動くのが理想ですが、その境地にいたるまではたくさん取り組むべきことがあります。

相手が怖いと思って動いてくれても、そこに適切な技をほどこさなければ一本にはなりません。打ち損じではないですが、あきらかに自分のミスで一本を逃したという経験はだれでもあると思います。相手を崩し、技を一本にするまでの過程は「攻める・ためる・打ち切る」です。

たとえば相手の中心を攻め、相手がこらえきれず思わず手元を上げ、その上げた手元に小手を打つとします。相手が出ようとしたところが打突機会であり、そこをとらえたのです。このときの「攻め・ため・打ち切る」という動作は現在進行形で行なわれています。「攻めながら・ためながら・打ち切っている」のです。この「ながら」が重要です。この三つがバラバラになっていると一本が成立しにくくなります。

三つが分断されると、わずかですが時間的な空白ができ、相手に対応できる時間を与えてしまうことになります。たとえば、打突には「ため」が大切ですが、ためておいても、そのための効力がきいているうちに打たないと相手によけられてしまいます。この効力がきいている状態が「ながら」です。

攻め入るためには、一足一刀の間合から打ち間へと入る必要があるのですが、この「入りながら」の動作については、右足が重要な役割を果たしています。

右足を前方に出すことで、身体もやや前傾します。この身体が出る過程が攻めとなり、相手に響くと手元が浮いたり、出てきたりとなんらかの反応を起こすのです。安全な間合から相手を攻めようとしてもなかなかうまくはいきません。相手を打つにはこちらもリスクを背負わねばなりません。間合に入るということは相手も打てる距離にいるということです。

わたしは基本的に攻める動作はこのくり返しと考えています。一足一刀の間合に入り、中心を攻めながら、ためながら、打突の機会に打ち切る。もちろん簡単にできることではありませんが、そこを基本とし、ときには相手の拳を攻めたり、眉間を攻めたりし、上下のバリエーションをつけます。しかし、上下のバリエーションは主ではありません。中心を攻めて崩すことを主軸とすることが攻撃力の向上にもつながると考えています。

崩さず間合を詰める

攻撃にはリスクがある。左足で右足を押し出すような気持ちで間合を詰めると姿勢の崩れが抑制できる

右足で攻める

右足を前方に出すことで、身体で圧力をかけることが可能となる。左足に体重を乗せ、右足を送り出す

4つの反応を分析。適切な技を選択する



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