蒔田 実の剣道授業 連載

蒔田 実の剣道授業 :6時限目 昇段審査の心得

2021年4月5日

2009.01 KENDOJIDAI

昭和59年、国際武道大学の開学と同時に助教授として赴任。現在、同校の副学長をつとめる蒔田実教士。剣道指導者を養成する専門大学の指導者として教壇に立ち、教え子は寺本将司選手(第55回全日本選手権大会優勝)、若生大輔選手(第56回全日本選手権大会準優勝)など平成の剣道界で活躍している。競技者としても世界選手権大会優勝、全剣連設立50周年記念八段選抜優勝大会で準優勝を果たすなど輝かしい実績を残す。その蒔田教師が指導体験、競技体験のすべてを伝える。

1時限目 剣道稽古の目的
2時限目 攻めと打突を連動させる
3時限目 仕かけ技を身につける
4時限目 応じ技を身につける
5時限目 素振りを実戦に直結させる
6時限目 昇段審査の心得

蒔田 実(まきた・みのる)

昭和23年大阪府生まれ、PL学園高から東海大に進み、卒業後、日本運送(現フットワークエクスプレス)に入社。昭和59年の国際武道大学開学と同時に同校の助教授となる。世界選手権大会個人優勝、全剣連設立50周年記念全日本選抜八段優勝大会2位、全日本選手権大会、全日本東西対抗、国体などに出場。現在、国際武道大学副学長、剣道部師範、剣道教士八段。

届かないところで打たない
近間に入る覚悟で距離を縮める

昇段審査の審査員をしていていつも感じるのは、届かないところから打ってしまう受審者がとても多いということです。開始線から立ち上がり、触刃の間合から交刃の間合、さらに一足一刀の間合、打ち間と距離が詰まっていきますが、打ちたい気持ちが強すぎると、届かないところで打突動作に入ってしまいがちです。

届かないところで打ちを出すと、竹刀を打突部位まで無理して届かせようとするので前傾姿勢になり、腰や足が残った打ちになります。

どうしても相手と対峙しているので「打たれたくない」という恐怖心、「打ちたい」という我欲が心に生じます。人間ですし、審査という特別な舞台ですので、そうなるのも仕方のないところです。しかし、審査の場合、審査員の心を打つ、もっとわかりやすい表現をすれば「合格」と判断する打突を出さなければなりません。それにはまず、自分が崩れずに打てる距離まで間合を詰めることが重要になります。いわゆる打ち間まで入ることですが、これは個人差があるので何センチとは定義できませんが、体勢が崩れずに打てる距離と考えてよいでしょう。

普段の稽古でまずはその距離感覚を身につけておくことが大事です。竹刀が交わり、どの程度の距離から打てるのかを知っておきます。ただし、打ち込み稽古で打てる距離が審査で届く距離とは限りません。打たれることを恐れ、手足の連動がうまくいかないことが多々あります。とくにあせると腰からではなく、手から先に動いてしまいますので、充分な注意が必要です。

よって審査では、稽古で覚えた距離よりさらに入る覚悟で間合を詰めたほうが適正な距離になると思います。打ちたいと思うと自然、剣先が上がっていってしまうので、左拳の位置を固定し、右手をわずかに落とすようにすると、打ちたい気持ちを抑えることができます。このかたちで間合を詰めることができれば、相手に意図が伝わりにくいので、圧力もかかりやすくなるはずです。

面だけが打突部位ではない
審査員は打突の機会をみている



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