インタビュー

コロナ時代の剣道(前編)

2020年12月28日

2021.1 KENDOJIDAI

※対談はマスク着用で行ない、撮影用のため一時、マスクを外しています

COVID-19の臨床現場で働く医師剣道家の立場から

2020年1月中国湖北省武漢で発生した新型コロナウイルス感染症は瞬く間に世界に広がった。その影響は甚大であり、剣道も例外ではない。政府により4月に緊急事態宣言が発出され、剣道も中止せざるを得なくなった。

6月10日に全日本剣道連盟により対人稽古の自粛は解除となったが、従来の剣道を再開できる状況にはない。ウィズコロナにおける新しい生活様式を踏まえた剣道の進むべき方向性は未だ不透明であると言わざるを得ない。

今回、順天堂大学医学部附属浦安病院(以下順天堂大学浦安病院)で新型コロナウイルス感染症の臨床現場に立つ林明人教授、末吉孝一郎准教授の2人の医師剣道家に『ウィズコロナにおける剣道』について話を聞いた。

※順天堂大学浦安病院は千葉県浦安市、東京ディズニーランドから5分のところに位置する。病床数785床の高度医療を提供する診療・教育・研究を行う大学病院であるとともに、地域医療を担う三次救急を受け入れる地域拠点病院の機能も担う中核病院でもある。

林明人医師は鹿児島県霧島市の出身。順天堂大学医学部を卒業、米国ウイスコンシン州立大学脳神経内科准教授、筑波大学を経て、現在、リハビリテーション科教授。医学部脳神経内科教授併任。剣道は中学で始め医学部学生時代は関東医歯薬獣剣道大会個人・団体優勝、全日本医科学生剣道大会団体優勝。20年間のブランクののち再開、現在剣道六段。全日本医師剣道連盟事務局長、茨城県剣道連盟医学委員長。日本スポーツ協会公認スポーツ指導者。日本オリンピック委員会医・科学スタッフ。

末吉孝一郎医師は宮崎県の出身で大阪大学医学部を卒業。大阪大学医学部附属病院、米国ハーバード大学を経て、現在、救急診療科で准教授として診療に従事している。順天堂大学浦安病院の入院患者の約3分の1は救急外来から入院し、重症患者は救命救急センターにて集中治療を行っている。剣道は小学1年から始め、大阪大学体育会剣道部時代には全日本学生剣道優勝大会の出場経験を持つ。現在剣道七段。松風館道場所属。

手さぐり状態での治療

日常生活に戻ることが困難。コロナウイルス重症化患者

新型コロナウイルス感染症では一定数の重症化がみられる。重症患者では長期臥床による筋力低下や嚥下機能の低下など病態が改善したあとでも高度の機能障害が残り日常生活に戻ることが難しい場合がある。順天堂大学浦安病院では新型コロナウイルス感染症においても多数の患者を受け入れ、高度医療を提供している。

重症患者では救命は勿論、長期入院による廃用症候群の予防が社会復帰には重要であるため早期からのリハビリテーション(以下リハビリ)の介入が大切である。末吉医師は救急医として患者治療に従事し、林医師はリハビリを担当し、入院早期からリハビリまでの医療を提供している。新型コロナウイルス感染症においても救急診療科とリハビリテーション科が相互に連携して全般的な医療を行うとともに、重症患者においても治療や回復にあたっている。

今回は、救急診療科は入口、リハビリテーション科は出口を担う臨床の現場でコロナ診療に従事する医師の立場からのウィズコロナでの剣道についての緊急対談を行った。剣道も感染リスクの観点から対人稽古の自粛期間を経てコロナ感染対策下での対人稽古が再開されているが、今後剣道が進むべき方向性は明らかでない。そこで、今後の剣道の進むべき方向性を踏まえ、お二人にご意見を伺った。

新型コロナウイルス感染症診療の実際について

―実際に新型コロナウイルスの患者さんを最初に対応する救急診療科の医師として、また、退院を目指してのリハビリを担当する医師として、どのような印象をもっていますか?

末吉医師 コロナウイルスとはかぜのウイルスの一つです。今回の新型コロナウイルス感染症も軽症ではかぜの症状程度で済むのですが、中には重症化することがあります。重症化した場合には肺炎から多臓器不全を併発し、生命にかかわります。特に高齢者や糖尿病などの基礎疾患をお持ちの方々は重症化のリスクが高いといわれています。

今年の1月に中国でこの感染症が発生したとき、多くの人はこの感染症はインフルエンザと同程度だろうと思っていましたが、実際私もそうでした。しかし、感染が瞬く間に広がり、私共の救急外来にも感染者が搬送されるようになりました。実際に診療にあたると、この感染症に対する認識は180度変わりました。つまり、その重症化のスピードや重症度はこれまでのウイルス感染とは全く異なるもので、とんでもないものが市中で流行しだしたと初めて実感しました。

林医師 まったく同感です。2020年2月あるいは3月初めの当時は、私も含めて多くの医師は数か月で流行がおさまるものかと思っていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の実態が分かるとともに予想していたものと全くちがうと認識するようになりました。中国武漢からの感染の広がりに続き、ヨーロッパからの帰国者による感染が広がっていきました。

ノーベル医学賞受賞者の山中伸弥先生も『私たちは新型コロナウイルスに対して、これまで思っていたことと違うことに謙虚な気持ちで対応していくべきだ』と話されていますが、その通りだと思います。新型コロナウイルスは未知のウイルスで医療者の予想とは違うものであり、私たちは未知の相手に対して謙虚に学び対応する必要があると思います。

飛沫感染、エアロゾル感染、接触感染があること、とくに無症状者からも感染すること、発症前や発症早期に感染力が強いこと、肺炎だけでなく嗅覚障害や血栓症などの多彩な症状を呈すること、年齢や基礎疾患などのリスク因子の有無により突然重症化してしまったり、後遺症がかなり残ったりすることなどがあげられます。

かからない、うつさない。感染症の院内治療について

―実際に新型コロナウイルス感染症の患者さんを診療する現場として、どのような治療を行っていますか?あるいは治療に難渋する点はどのようなことですか?



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