剣道極意授けます 連載

究極の決め(有馬光男範士)Part2

2021年6月14日

剣道は最後の〝決め〟が勝負を分ける。声で決め、手の内で決め、体勢で決め、そしてそれぞれの技における〝決め〟の要諦を知れば、おのずと一本は決まるのである。剣道の最高峰・八段の頂点を決める明治村剣道大会で優勝二回。名人・有馬光男範士が〝決め〟について語る―。

有馬光男範士

ありま・みつお/昭和十八年岡山県生まれ。西大寺高校から大阪府警へと進み、全日本選手権大会二位、全国警察官大会団体・個人優勝など輝かしい戦績を残す。平成五年、八段に昇段。その後、八段の頂点を決める明治村剣道大会で二度の優勝を飾る。現在は大阪府警察剣道名誉師範、花園大学剣道部師範、トールエクスプレスジャパン剣道部師範、大阪星光学院中学・高校非常勤講師などを務める。剣道範士八段

発声で気持ちを盛り上げ、相手に集中する

 有効打突の条件にある「充実した気勢」という文言が示すとおり、一本を決めるためには気勢、もっと分かりやすく言えば発声がとても重要になります。

 はるか昔、素面素小手の時代であれば、鋭い発声は相手を威圧するために非常に効果的であったと思います。しかし、現代剣道は面を着けているため、発声で相手を委縮させることはなかなか難しいと思います。

 では、発声とは何のためにあるか。私にとって発声とは、自分の気持ちを盛り上げ、奮い立たせるためにあります。腹からにじみ出るような、誰が聞いても違和感のない発声を心がけます。〝違和感のない〟というのは、昨今学生たちの試合を観ていると、何と言っているのか分からない発声をよく耳にするからです。とくに打突時は、「メン!」「コテ!」「ドウ!」「ツキ!」としっかり発声することが肝要です。

 そしてもう一つ気をつけておきたいのは、発声の機会です。遠間から鋭い発声で自身を奮い立たせ、攻め込んでいきます。間合に入ったら無駄な発声はせず、腹に気を溜めて打突の機会を探ります。機会が見えたら捨て切って技を出し、部位をとらえると同時にふたたび鋭く発声します。この一連の流れが、打突を一本にするための〝決め〟へとつながると思います。

発声とはただ声を出すことではない。正しい発声を心がければ、気持ちが盛り上がり、相手に集中することができる



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