インタビュー 全日本剣道選手権大会

松﨑賢士郎インタビュー

2021年7月5日

2021.6 KENDOJIDAI

第68回全日本選手権を制した松﨑賢士郎選手。前回の決勝での敗戦を乗り越え、初めて天皇杯を手にした。
「今までやるべきことはやってきたのだから」
全てはこの日のために。剣道人生の全てをかけて戦った。

松﨑賢士郎(まつざき・けんしろう)

平成10年長崎県諫早市生まれ、22歳。島原高から筑波大に進み、今春筑波大大学院に進学。インターハイ団体2位個人3位、国体優勝3回、全日本学生大会団体2位個人2位など。全日本選手権については大学2年時より3回連続で出場し、一昨年ベスト16、昨年2位、そして初優勝を果たした。剣道四段

冷静沈着、一戦集中
激戦を制す

 初めて全日本選手権に出場したのは大学2年生の時だった。

 出場する直前こそ、世間からは「生きのいい大学生がいる」という程度の見方だったかもしれない。しかしいざ試合が始まると観客の度肝を抜く大立ち回りをみせた。3回戦で前田康喜選手(大阪)に敗れたが、日本を代表する若手剣士と互角にわたりあった。「松﨑賢士郎」の名前が広く知られるきっかけになった出来事だった。そして前回は優勝候補たちを次々と破って決勝に進出。けれんみのないメン技を武器に天皇杯まであと一歩まで迫った。

 3回目となった今回の全日本選手権、「次こそ優勝」の思いはひとしおだっただろう。

「優勝を目指してこの一年取り組んできました。当日は、自分でも驚くほど冷静で、一戦一戦集中して戦いました」

 実は当日、あまり剣道の調子が上がらなかったという。実際、1回戦では髙優司選手(大阪)に一本を先制されあわやという場面があった。

「体のキレがよくなく、そこで判断を誤ったところがありました。ですが、自分でも驚きだったのが、気持ちは落ち着いていて、一本取られた後も冷静に動くことができました」

 一本を取られた直後も、至って冷静。松﨑選手の二本目直後の対応が驚異的だった。剣先低く溜めながら前に出てきた髙選手が機とみてメンに跳び込んだところを表鎬で返し、ドウに切った。文句なしの一本を決め劣勢を盛り返し勝負とした後、三合後に、相手を引き込んで出ばなメンを決める。

圧巻の一本だった。

「調子どうこうよりも、『今までやるべきことはやってきたのだから』と肚をくくって試合に臨めたことが良かったのかもしれません」

 準決勝では、筑波大の同級生である星子啓太選手(鹿児島)と対戦。平成10年生まれ世代を代表する二人は、これまで幾度となく大舞台で戦ってきた。日本一、世界一をめざす松﨑選手にとって、星子選手との対戦は大事な一戦だった。

「実際に対戦して、強かったですし、お互いが一瞬の隙をちょっとで見せれば打たれますし、今回たまたま時間内で決まったけれど、どちらが勝ってもおかしくない、厳しい試合でした」

 一進一退の攻防が続く中、試合終盤に事態が動く。星子選手がコテに切り込んだところで松﨑選手が上からメンに乗る。旗三本。試合時間残り20秒という場面だった。

「星子に勝った限りは、負けられない、決勝で勝ちたいという思いがさらに強くなりました」

 2年連続2回目の決勝の舞台。対戦相手は筑波大の先輩にあたる村上雷多選手(大阪)。

「威圧感が凄かったのですが、それに負けずに自分の間合をつくって技を出すことに集中しました」

 試合中盤、松﨑選手から仕掛け、出てきたところをメンに乗って先制。二本目、取り返そうとする村上選手を引き込み、コテを決めて決着。昨年度の無念を晴らし、川添哲夫選手、竹ノ内佑也選手に続き学生として3人目の天皇杯を手にした。

「体が自然と反応して技を打っていました。試合が終わった後、意外と冷静な自分がいて、多少喜びもあったと思いますが、頭の中では反省点や課題点がさきに浮かび、気が抜けませんでした。今回の試合に当たっては不思議なくらいいつもと違っていて、前よりも自信をもって臨めました。やってきたことを後悔しないようにしたいという思いが、集中につながったのかもしれません」

あの戦いから学んだことを意識
より深く課題を研究した

 各地で稽古の自粛となった2020年、松﨑選手が通う筑波大学の剣道部においても活動が自粛になった。

 世界大会も、選手選考を行なう全剣連の合宿もなくなった。モチベーションを保つことすら難しい中、松﨑選手は素振りなどできることをこつこつ行なって自分を奮い立たせていた。

「とくに今回に向けては、前回の全日本選手権の反省から、課題についてより繊細に取り組むようになったと思います。また、面打ちだけではなく、小手打ちなど他の技についてもより意識的に取り組むようになりました。それが良かったかもしれません」

 この一年、今まで筑波大学や全日本選手権、世界大会の強化訓練講習会で学んだことなどをより深く研究するようになったという。その研究の成果と言えば、今回の決勝戦で見せた小手技などは最たる例だろう。相手を引き込み、打ち間をつくって小手を決めた。松﨑選手も、あのような技を決めたことで自身の成長を感じたのではないだろうか。

「一本になる、ならないにかかわらずあの場面で『打てる状態』をつくれたことは自信になったと思います」

 試合も練習試合もできないという状況下で、自分の取り組みの成果を実感した一本になった。

「そういう意味では、この前の選手権が自分のやってきたことを実戦でためす機会でしたね。打突の好機を自分のものにできたり、技が増えたり、といったことは感じられました」

 年間を通して部活動はできなかったが、素振りや学校での体育授業、部員数人で集っての自主稽古を行なって自分を磨いた。

「こうした状況の中、稽古をさせていただく環境があったのはとてもありがたかったです。大学や先生方のご理解があってこそだと思います」

相手との差をあきらめない
強い思いが上達につながった

 なぜ全日本選手権を優勝できたのか。そのことを質問した時、松﨑選手は深く考えながら、レベルアップの要因を答えてくれた。



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