剣道の技 構え 足さばき 足と有効打突

左足の技術:石井 猛教士八段

2021年8月23日

KENDOJIDAI 2021.2

左足は打ち足。身につけるべき重点項目は左足を継がずに打つことだ。体の運用、空間打突、打ち込み稽古など、稽古で左足を意識することで内容は大きく変わる。その意識すべき内容を石井教士が解説する。

石井 猛教士八段

いしい・たけし/昭和33年茨城県生まれ。大子第一高校(現大子清流高校)卒業後、警視庁に奉職。警視庁武道専科で佐藤博信範士、太田忠徳範士の指導を受ける。警視庁剣道特練監督時代は警視庁を全国優勝に導いた。警視庁剣道副主席師範を経て平成30年に定年退職。現在は東京武道館師範、東京修道館師範、小金原正剣会師範。

 剣道は竹刀を媒介として攻め合い、隙を捉えて打つものです。自分勝手に打っても評価されないことは周知の通りであり、攻め勝って打つことを勉強しないと実力は向上しません。

 全日本剣道連盟は段位の付与基準として、三段では、「剣道の基本を修錬し、技倆優なる者」、四段は「剣道の基本と応用を修熟し、技倆優良なる者」、五段は「剣道の基本と応用に錬熟し、技倆秀なる者」と明記しています。比較してみると、「応用」としての対人的技能が必要であり、さらに六段は「剣道の精義に錬達し、技倆優秀なる者」、七段は、「剣道の精義に熟達し、技倆秀逸なる者」とあります。

 段を重ねるごとに、相手を攻め崩す、引き出す、遣うなど対人的技能が重要となることを理解できると思うのですが、もっともシンプルな表現をするならば、相手を攻める中、「ここだ」と感じたときに、よどみなく技を出せることが必要になります。その技術の基軸となるのが左足の運用です。

 左足が打てる状態になっていないと、有効打突の基準を満たす技は出せません。わたしは現在、幼少年から一般愛好家の大人を指導する機会に恵まれていますが、常に左足を意識して稽古をするように助言しています。

 一般的に基本稽古でもっとも時間を割くのが面打ちです。一足一刀の間合に入り、左足を継がずに打つことを課題とするのは、いつでも打てる状態を身体で覚えるためです。構え方や竹刀の振り方に問題があると、左足を動かしてから打ってしまうこともあります。このような打ち方では実戦で通用しにくいので、基本稽古では左足を継がずに打つことを主眼に行なうことが大切です。

 昇段審査は同年齢の受審者で行ないます。審査員は、受審者が触刃の間合、交刃の間合、一足一刀の間合と詰めていくなかで、どのような攻めを施し、どのような技を遣うのかを見ています。

 一触即発の雰囲気のなかで、一瞬の機会をとらえた技は、審査員の心を動かします。そのような技は左足が安定し、構えに隙がなく、相手が我慢できずに技を出してしまった瞬間に発現されることがほとんどです。打てた機会は、裏を返せば打たれる機会でもあり紙一重です。

 間合が詰まっていく状況で打ち気にはやると足が出ず、逆に手元だけが先に出てしまうことがよくあります。左足が不十分な状態で技を出してしまうと、このような打ち方になってしまいます。

 審査ではどうしても「打ちたい、打たれたくない」という気持ちが先行し、相手を崩す前に自分から崩れてしまうことが多々あります。そのような状態を作らないようにするには、左足をしっかりと安定させ、いつでも打てる状態にしておくことが必要になるのです。

 足の運用は、歩み足、送り足、開き足、継ぎ足の4つが教本に載っているように、継ぎ足を用いての打ち方はあります。左足を寄せる継ぎ足には、遠い間合から打突する際に効果を発揮します。どの足さばきも身につけておかなければなりませんが、送り足から一足一刀の間合に入り、そこからは左足を動かさずに打つことを覚えないと、臨機応変の技が使えなくなってしまいます。

 剣道は体の運用、素振り(空間打突)、打ち込み稽古、地稽古が一本の線でつながるような稽古をしないと本番に直結する実力を養うことができません。それぞれの稽古を一本の線で結びつける一つの着眼点が左足であり、その具体的な稽古法を紹介したいと思います。



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