中心 剣道の技

中心を制す、 会心の一本を決める(東 良美 / 関屋 猛久)

2020年11月30日

2020.3 KENDOJIDAI

崩して打つには中心を攻めるのが剣道の常識。だが、ちょっと待て。中心を制したからといって、ただちに一本につながるわけではない。問題はここからだ。中心を制してから一本を取るまでのプロセスを一流剣道家が詳しく解説する。

中心を制するための稽古
相手を凌駕する剣道を求め続ける

東レ名古屋に所属する実業団剣士であり、星城大学剣道部男子監督の関屋教士は昨年11月、見事、八段審査に合格した。同大学剣道部師範の東良美範士に師事し、学生を指導するとともに打ち込み稽古を繰り返した。中心を制するには、相手を凌駕する気迫が必要であり、その気迫は地道な打ち込み稽古を繰り返すことで養っていた。

東 良美範士八段

ひがし・よしみ/昭和32年鹿児島県生まれ。鹿児島商工高校(現樟南)から法政大学に進み、卒業後、愛知県警察に奉職する。全日本選抜八段大会優勝、全日本選手権大会ベスト8、全日本東西対抗大会出場、全国警察大会二部優勝など。愛知県警察教養課術科室長・剣道主席師範を最後に退職。現在、愛知県警察名誉師範、星城大学剣道部師範、ネッツトヨタ名古屋剣道部師範。

関屋 猛久教士八段

せきや・たけひさ/昭和46年愛知県生まれ、48歳。星城高校卒業後、東レ名古屋に入社。全日本都道府県対抗剣道優勝大会10回出場(準優勝2回)、全日本東西対抗剣道大会出場。昨年11月の八段審査で合格率0・4%の壁を越えて合格。現在、東レ名古屋に勤務するかたわら星城大学剣道部男子監督として学生を指導する。

相手を凌駕する気迫が恐懼疑惑を誘発する

中心を取っても勢いがないと打突につながらない

東:今回、関屋先生が5回目の挑戦で八段に合格しました。東京に行く朝も、私と立合稽古をしたのですが、課題は今回のテーマである「中心を取る」ということでした。

関屋:私は高校卒業後、東レ名古屋にお世話になり、若いときから実業団大会をはじめ試合中心の剣道生活を送ってきました。八段をめざした頃もどうしても相手と対峙し、攻め合ったときに必要以上に間合を切ったり、左拳が正中線から外れることがありました。

東:私も警察で特練員をながく続けていました。試合中心で勝負の機微を学ぶことは悪いことではありません。実際、今回の立合で動揺せずに打ち切ることができたのは、試合経験の賜物だと思います。ただ、審査の場合、求める一本の基準が試合とはやや異なる部分があります。それが中心を制し、打たれることを恐れずに自分の技を出し切ることです。

―中心を制することをテーマにした稽古では、どこにポイントを置いていたのでしょうか。

東:いちばん大切なことは、中心を攻めたとき、打突に直結する勢いがないといけないということです。打ち切った技を決めるには、相手に恐懼疑惑を起こさせ、そこを捉えなければなりません。相手を凌駕する勢いをつけるには質の高い打ち込みをしっかりとすることです。打ち込みをしっかりと行なった上で、実際の立合で理のところを勉強するのです。

―前提として勢いある打ち込みができていないといけないのですね。

東:勢いがなければ中心を攻めても、有効打突になかなかつながりません。今回、それを実践できたのが関屋先生でした。関屋先生は、前回の審査では一次合格でしたが、二次は残念な結果に終わっていて、半年間、 「勢い」をテーマにした打ち込みを繰り返し、それが花開きました。

―この半年間、どのようなことに注意されましたか?



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