昇段審査との向き合い方 連載

昇段審査との向き合い方(亀井 徹)第二回

2021年9月20日

2021.8 KENDOJIDAI

試験に合格するには傾向と対策が必要不可欠。剣道の昇段審査にもそれが求められるが、亀井徹範士が市民剣士を対象にした講座を開講する。

亀井 徹

かめい・とおる/昭和29 年熊本県生まれ。九州学院高校から明治大学に進み、卒業後、熊本県警察に奉職する。熊本県警察首席師範を最後に退職。主な実績として全日本選手権大会2位、世界剣道選手権大会出場、全日本都道府県対抗大会出場、全日本東西対抗出場、全国警察大会一部優勝、国体優勝、全日本選抜八段優勝大会2位3位、剣豪「丸目蔵人」顕彰全日本選抜剣道七段選手権大会優勝2回、岩手県知事杯剣道七段大会優勝3回などがある。全日本剣道連盟強化担当常任理事。剣道範士八段。

基本は大きく正確に打つ
審査は小さく鋭く正確に打つ

 剣道は何歳からでも始められ、コツコツと稽古を続けることで、年齢を重ねても上達することが可能です。成人してから剣道を始めた方々の竹刀を握られた理由はさまざまですが、本当に熱心に取り組まれています。ただ、熱心に取り組むあまり、ぎこちなさや身体の硬さなどを実感しているのではないでしょうか。

「あらゆる修行の根源はいかに自分が無心になれるか、自然になれるかということ」という教えがあるように、自然、すなわち無駄な力を抜くということは一生かけて求めていくことなのかもしれません。ただし、それは段位に応じた目標がありますので、その目標に向けてなにをすべきかを明確にし、稽古をコツコツと続け、検証・確認・修正を加えていくことで、必ず上達していくことができると思います。

 大人から剣道を始めた方々は、所属している道場の先生方から基本の大切さについて指導を受けていると思います。例えば切り返しについては〝大強速軽〟の教えの通り、大きく、強く、速く、軽やかに行なうことが大切であり、私はこれに〝確〟すなわち正確というキーワードを加えるようにしています。面打ちや小手打ちなどの基本打ちについても、同じように行なうことが大切です。わたしも、そのように指導していますが、大人開始組の方は、審査でもそのような打ちを出してしまいがちです。

 全日本剣道連盟の『称号・段位審査規則』の第条に「付与基準」が記されています。初段は、剣道の基本を習得し、技倆良なる者。二段は、剣道の基本を修得し、技倆良好なる者。三段は、剣道の基本を修錬し、技倆優なる者。三段までは〝基本〟という文言のみですので、基本を正しく行うことができていれば、比較的苦労することなく、昇段することができたはずです。

 しかし、四段になると、剣道の基本と応用を習熟し、技倆優良なる者。さらに五段は、剣道の基本と応用に錬熟し、技倆秀なる者と記されているように〝応用〟という文言が入ります。応用とは、対人動作です。

『剣道指導要領』(全日本剣道連盟発行)の第七章は「応用動作(対人的技能)」が記されています。基本動作から応用動作(対人的技能)への移行の留意点として「気剣体一致の打突指導」「攻め合いの中での打突の指導」「打突の機会をとらえることの指導」「しかけ技に対応した応じ技の指導」などを挙げているように、四段以上は、その段位にふさわしい内容で、これらの項目を審査で表現できなければなりません。

 子供の頃から剣道を始めた方は、基本稽古を繰り返してきた年数はもちろんのこと、試合で勝負の感覚を養っているので、高校や大学を卒業後、剣道から離れていたとしても、対人動作の感覚が身体にしみついています。ところが、大人から始めた方は試合などの実戦経験が少ないので、その感覚を意識的に養っていかなければなりません。少々乱暴な表現になるかもしれませんが、剣道らしい動作を身につけなければならないのです。

 基本は大きく正確に打つことが求められますが、応用は小さく鋭く正確に打つことが求められますので、その身に着け方を紹介します。基本を土台として応用があるということを理解した上で、読み進んでいただければと思います。

剣体一致の打突
踏み込み足でリズムを覚える



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