実力を伸ばす稽古法 連載

実力を伸ばす稽古法(恩田浩司)

2022年1月17日

2021.6 KENDOJIDAI

「第三者がみたときどちらが元立ちと習技者なのかわからない打ち込みをしなさい」。警視庁特練員時代、恩田教士はそのような指導を受けた。緊張感に満ち溢れた稽古が質を高めるが、とくに稽古時間に限りがある市民剣士は正しさを求め、工夫、実践することが大切と強調する。

撮影=西口邦彦
撮影協力=東京修道館

恩田浩司教士八段

おんだ・こうじ/昭和35年東京都生まれ。修徳高校から警視庁に奉職する。全日本選抜剣道八段優勝大会優勝、全国警察大会団体優勝6回、全日本選手権大会出場、全日本都道府県対抗大会優勝、寬仁親王杯八段選抜大会優勝3回などの戦績を収める。令和3年3月、警視庁副主席師範を最後に警視庁退職。現在、東京修道館師範。

 令和3年3月31日をもって警視庁を退職しました。警視庁には42年間お世話になりましたが、警察学校卒業後、19歳のときから剣道特練員候補として剣道特練の稽古に参加し、そこから副主席師範で卒業するまでの41年間、剣道を中心とした警視庁生活を送れたことに改めて感謝しているところです。

 警視庁剣道特練員は各種大会で優勝をめざして日々、稽古を積んでいますが、稽古時間の大半に費やされるのが基本の習得です。実戦は応用であり、応用は基本を土台として成立しているものですので、素振りに始まり、切り返し、打ち込み、掛かり稽古、技の稽古などを日々くり返していました。

 仕事の余暇として稽古を続けている一般愛好家の方々は地稽古中心の稽古になることが多いと思います。しかし、地稽古は基本稽古で身に着けたことを試す応用稽古ですので、必ず切り返しや打ち込みなどの基本稽古を実践することが上達につながります。

 わたしは中村福義館長とのご縁で、東京修道館の指導者に加えていただき、一般愛好家の方と竹刀を交える機会をいただいています。修道館では指導稽古に入る前に足さばき、素振り、切り返し、打ち込みなどの基本稽古を必ず行なっています。その成果が昇段審査でも表れています。

 剣道の稽古は文字にすると素振り、切り返し、打ち込み稽古、掛かり稽古、互格稽古、指導稽古など初心者から上級者まで稽古法に変わりはほとんどありません。警視庁剣道特練の稽古も剣道を始めたばかりの少年剣士の稽古も文字で表現すれば、ほぼ変わりはないのです。

 ただし、練度に応じて求めるものや、めざすものは変わってきますので、日々の稽古では正しさを追求し、質の高い稽古を実践することが大切になります。「稽古は試合のように、試合は稽古のように」と稽古の心得で説かれているように、なるべく本番に近い緊張感をつくることが重要となります。

 正しさの目安となるのは、有効打突です。剣道試合・審判規則第条に「有効打突は充実した気勢、適正な姿勢をもって竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする」と記されています。素振り一本から、常にこの条件を満たす稽古を心がけると、緊張感が変わってくると思います。

 道場に行って稽古をする回数には限りがあると思いますが、素振りや足さばきの稽古は一人で実施できます。一人稽古で工夫・研究したことを道場での稽古で試すようにすれば、課題も明確になり、楽しさも生まれてくると思います。

礼法の確認。できていると思ってできていないのが礼法



残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます

ログイン

or

登録

登録


Subscribe by:

You Might Also Like

No Comments

Leave a Reply