修養としての剣道 連載

剣道修錬のねらいとあり方:その2(⻆ 正武)

2021年12月20日

⻆ 正武(すみ・まさたけ)

昭和18年福岡県生まれ。筑紫丘高校から福岡学芸大学(現福岡教育大)に進み、卒業後、高校教諭を経て母校福岡教育大学に助手として戻る。福岡教育大学教授、同大学剣道部長を歴任。平成11年から14年全日本剣道連盟常任理事。第23回明治村剣道大会3位。第11回世界剣道選手権大会日本代表女子監督。著書に『剣道年代別稽古法』『剣道は基本だ』『人を育てる剣道』など。剣道範士八段。九州学生剣道連盟会長。

入門期・錬成期・錬達期

 前回は剣道修錬のあり方として身法・刀法・心法について述べましたが、今回はそれらの段階や過程について内容を考えてみます。

 修錬の段階については様々な表現がなされます。古くからは守・破・離という表現があり、入門期・錬成期・錬達期と表現し、初心・初級・中級・上級と表現されることもあります。私は入門期・錬成期・錬達期という段階を用いることといたします。

 剣道に勤しむ者としては、自分が現在どの段階にあり何を学ばなければならないのか、そしてその先にどのような段階があり何が課題となるのかについて知っておくことが大切です。それを知ることは容易ではありませんが、師や先輩方の剣道を見取る眼を養っておくことが必要です。つまり入門期にはただただ教えられるままに基礎基本を躰で覚えることで精一杯の段階ですから、先の段階や方向性を自らの剣道の姿で示し与えるのは、指導者の重要な指導課題となります。運動学習は言語で伝えることよりも、見て習い覚える側面が多いので、指導者の美しい姿や鋭い気迫などは重要な伝承法ということになります。

 さらに重要なことは、なぜ剣道修錬に取り組むのか修錬の目的をしっかり自覚することです。昨今では幼少年期に入門することが一般的ですが、精神的発達の未完成な時期からやがて自我意識の芽萌える思春期に至る段階で、剣道修錬の目的を明確に意識づけておくことは欠くことのできない課題です。技術の上達や多様な稽古を体験する段階に至って目標が多様化する段階に至っても、目的意識が動揺することがあってはなりません。

入門期のねらいと注意すべきこと

 小学校中・高学年は身体運動能力の発達が著しい時期で、知覚→運動の調整力は特にめざましいものがあります。この時期は竹刀の操作と足のさばきという協応性も容易に吸収していくものですが、未だ筋力の発達は不十分であり多彩な技などの指導を急いではなりません。次から次に様々な技法を教え込み、それを用いた試合を楽しませてしまったのでは、当てる剣道への道を進むことになりやすいので注意を要します。当てる剣道と打つ剣道の分岐点が入門期の修錬のあり方に存在することをよくよく知っておきたいものです。

正しく基本を錬り上げる意義



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