高校剣道

攻撃的剣道を貫いて 筑紫台(福岡)

2022年3月14日

昨年、コロナ禍により中止となった高校生の夢舞台・春の全国選抜。今年は徹底した感染防止対策のもとに開催され、ひさびさに高校日本一が決定した。新型コロナウイルスによって剣道もさまざまな変化が求められる中で、強豪校はどのようにしてチ ーム力を高め、全国屈指の力を蓄えたのか。全国選抜で決勝まで勝ち上がった男女上位2校の現在の取り組みから、強くなるための道すじを探る―。
桐蔭学園(神奈川)島原(長崎)
中村学園女子(福岡)筑紫台(福岡)

高校剣道時代 Vol.1

構成=寺岡智之
写真=西口邦彦

 高校生の大目標であるインターハイは、各都道府県からわずか男女1校ずつしか出場権を得ることができない。例年、その切符をかけて熾烈な予選会が各地で行なわれているが、その中でも一番厳しいと言われているのが、福岡県予選である。男女ともに強豪校が多く存在し、ブロック予選から試合は白熱。とくに女子は、現在インターハイ4連覇中の中村学園女子と、こちらもインターハイ、玉竜旗、魁星旗と優勝経験のある「筑紫台」が、毎年のように激戦を繰り広げている。

 福岡県太宰府市にある筑紫台は、もともと筑紫工業高校という男子校であり、1992年に男女共学化。このタイミングで強化部に認定され、それから数年経って女子剣道部も強化の対象となった。筑紫台の女子剣道部は平成18年にはインターハイ初制覇。平成22年には松本弥月選手(全日本女子選手権優勝2回・世界選手権個人優勝2回)を擁し、2度目の日本一を果たした。福岡県勢にとってはインターハイに並ぶ栄誉である玉竜旗優勝も4度。大学卒業後から指導を続けている金森靖二監督のもと、現在も日本一を目指して日々厳しい稽古に取り組んでいる。

主な戦績
インターハイ 優勝2回、全国選抜 2位2回、玉竜旗 優勝4回、魁星旗 優勝2回

主な卒業生

松本弥月さん(神奈川県警 特練員)
全日本女子選手権優勝2回、世界選手権では日本代表の大将を務め、個人優勝を果たすなど、現役世代の中でも群を抜いた実績を持つ最強剣士。高校時代はその圧倒的なポテンシ ャルで各種全国大会を席巻し、インターハイでは個人団体ともに日本一に輝いている

SNSを使用して自主性の育成
笑顔の写真が気持ちをつないだ

 本来行なわれるはずだった昨年の全国選抜は、筑紫台にとって初優勝がかかる大事な一戦だった。県の新人戦ではライバルの中村学園女子に勝利した。当時の選手たちも、必ず全国選抜の優勝をつかみ取るという強い気持ちをもって稽古に励んでいたが、その想いは大会中止というなんともやるせない結末を迎えてしまった。当時の様子を金森監督はこう回想する。

「全国選抜がなくなることが決まったときは、どうしようもないくらい落ち込んでいました。私は指導者としてなんとか子どもたちに前を向かせようと、インターハイにかけろということをずっと言ってきましたが、気持ちを切り替えるまでに相当な時間がかかりました」

 新型コロナウイルスの影響により、学校は休校。もちろん稽古ができるような状態ではなくなった。リモート稽古やウェブミーティングをしようかとも考えたが、ここで金森監督は部員の自主性を伸ばす方向に舵を切る決断を下した。

「部員全員に一日の計画を立てさせて、それをSNSで共有することにしました。それぞれが素振りをやったりトレーニングをしたり、自分ができることを考える。それに加えて、一日頑張ったという証として、笑顔の動画や写真を送ることも指示しました。最初は大会がなくなったことに落ち込んでいる様子でしたが、この試みをしたことで、部全体がいつもの元気を取り戻し、士気も高まったような気がします」

 残念ながら玉竜旗もインターハイも中止となってしまったが、3年生は「高校生想代」に向けて走り出した。年末の試合当日、金森監督の姿は会場になかった。新チームの全国選抜予選を控えていたため、ついていくことができなかったそうだ。しかし、3年生の選手たちは「任せて下さい! 必ず優勝してきます」と意気込んで沖縄に向かい、見事その約束を果たしてみせた。

 全国選抜の県予選は全国で相次ぐ緊急事態宣言等の影響もあり、開催はされないことになった。新人戦の結果をもって代表校が決定されることとなり、中村学園女子と筑紫台が、2年ぶりとなる全国選抜の舞台を踏むこととなった。

全国選抜のタイトルに届かず
「全国の2番なんだから胸を張れ」



残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます

ログイン

or

登録

登録


Subscribe by:

You Might Also Like

No Comments

Leave a Reply