インタビュー

起こりをとらえて打て(若手剣士)Part2

2022年7月25日

2021.8 KENDOJIDAI

心の動き、身体の動きを感じ取る

渡部一輝(愛媛)
わたなべ・かづてる/昭和60年愛媛県生まれ。新田高から東洋大に進み、卒業後愛媛県警察に奉職。全日本選手権出場、全日本都道府県対抗大会出場、国体2位、全国警察大会団体3部2位3位個人出場など。現在、愛媛県松山東警察署勤務。剣道錬士六段

いつでも打てる体勢
左のラインを意識して構える

 起こりとは相手が動作を起こそうとした瞬間のことで、代表的な技は相手が技を出そうとしたところを捉える出ばな技です。これらの機会は、相手の動きを見て打とうと思った時にはもうすでに機会を逃すほど、ほんの一瞬です。起こりを捉えるためには、相手の起こりを感じ、相手が打とうとした瞬間には技を出せていなければなりません。

 起こりの捉え方は人によって異なると思います。本記事では、私なりに相手の起こりを捉えるために稽古で意識していることをお話しさせていただきます。

 まず、起こりを捉えるためにはいつでも打てる体勢を維持していることが必要です。いくら相手の起こりを感じとれたとしても、自分の体勢が崩れていては打つこともできませんし、打ったとしても一本には結びつきません。

 私が構えで意識していることは左手、左腰、左足の左半身のラインを意識することです。左手はしっかり握って中心に据え、左腰と左足は常に相手に向いているように意識して構えています。左腰や左足が開いてしまっては前に出る力が弱くなってしまいますし、打ったときに体が開いてしまいます。左腰、左足が常に相手に向いていればしっかりと前に蹴り出すことができ、打った後の姿勢の維持にも繋がると考えています。

 重心は真ん中よりやや前にかけるようにしています。私の場合はこの方が安定し相手の起こりに速く反応することができていると感じています。この時に注意することは踵が上がりすぎないようにすることです。左足の踵を上げすぎてしまっては膕(ひかがみ)が曲がってしまい打ちに勢いが出ません。そのため足の付つけ根ではなく湧泉に体重をかけるように心掛けています。

 足捌きは、常に細かく動かし続けることを意識しています。足はつま先を浮かさないようにし、膝から出るようなイメージを持ちます。腰の高さを一定に保つことで、相手の起こりに速く反応できるようにしています。

 技を出す時は下半身から動き始めることを意識しています。焦って手打ちになってしまっては打突時の体勢も崩れてしまいますし、打ちも弱くなってしまいます。

 また、打突時に意識しているのは、右足の踏み込みを強くすることと左足の引き付けを速くすることです。右足で瞬時に強く踏み込むことで打突の強度を上げます。そして踏み込んだ後に早く左足を引きつけることで打突後の姿勢の崩れを少なくします。

稽古では先を取ることを意識
打突の好機をつくっていく

 稽古では私は常に相手の先をとることを意識しています。

 起こりを捉えるためには、相手が動作を起こしてからでは間に合いません。常に先をとること、打つ機会を自ら作っていくことを意識して攻め続け、相手がこちらの攻めに反応しようとしたところを捉えるように心掛けて稽古しています。

 また、稽古では打たれることを恐れず思い切って打ち切るようにしています。その後、打突するまでの段階はどうであったか、打突の機会はどうであったか等を反省・検討することが大切です。

 稽古以外の時間にできることとしてイメージトレーニングも重要です。様々な相手・状況・場面を考え、その時の相手の動き、自分の起こりの捉え方をイメージするようにしています。そして実際の稽古に活かすようにしています。こうした稽古での経験の積み重ねが自分なりの起こりの捉え方を見つけることに繋がると考えています。



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