2022.8 KENDOJIDAI
インタビュー=寺岡智之
写真=笹井タカマサ、西口邦彦(試合写真)
第17回世界選手権で日本の大将を務めた安藤翔選手が、今春から母校・国士舘大学の指導者として華麗なる転身を遂げた。警察ト ップ選手の転身は異例中の異例。大きな決断の裏にはどのような心境の変化があったのか。剣道家としての第二幕をスタートさせたばかりの安藤選手に、その胸中を語ってもらった――。
安藤翔
1990年北海道生まれ。東海大第四高から国士舘大を経て、北海道警に奉職する。大学時代には団体・個人ともに日本一を経験。社会人となってからも、全日本選手権3位、全国警察選手権優勝などトップレベルの戦績を残す。2015年、第16回世界選手権大会において日本代表に初選出。2018年の第17回大会では、団体戦の大将を務めるとともに個人優勝を果たした。本年4月より母校・国士舘大学で教鞭を執る
未来の自分に対する不安。環境を変えたいという想い
ーースーツ姿がとても新鮮ですね。まずは警察官から国士舘大の指導者に転身した経緯について聞かせてもらえますか。
「恩師である氏家道男先生の御退職に合わせて、国士舘に戻ってこないかというお話をいただきました。最初は北海道を出るつもりはなかったのですが、こういった話は誰もがいただけるわけではありませんし、とても光栄なことです。当時は、自分の選手としての将来を考えたときにどうなってしまうのだろうという不安を抱えていた時期でもありました。特練員を引退したのちは剣道から離れる時間も増えることが予想されましたし、国士舘なら生涯、剣道に携わっていけるだろうと。そういった理由もあって警察官を辞し、国士舘にお世話になることを決めました」
ーー警察官を辞めることに対するまわりの反応はいかがでしたか。
「話をいただいた時点ではまだ悩んでいたわけですけど、相談したまわりの方々がみな転身に賛成してくれたのは、私にとって大きな後押しになりました。本来は、北海道警に育てていただいた恩返しとして、しっかりと特練員を勤め上げてから辞めるべきなのですが、タイミングがそれを許してはくれませんでした。ただ、北海道警の先生方やチームメイトも私の意志を尊重してくださって、本当にありがたかったなと思います」
ーー古川和男先生にも相談を?
「もちろんです。古川先生には大学を卒業して北海道に戻ってくるときにも相談をさせていただいています。先生からは『自分の人生だから自分で決めなさい。ただ、国士舘に行けば稽古相手が警察官から学生になる。これまで以上に頑張らなければ、結果は厳しくなるぞ』と言われました。その言葉で少し身が引き締まった気がします」
ーー最終的な決め手は何だったのでしょうか。
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