稽古方法

動作分析で差をつける(東 良美 )

2022年9月26日

KENDOJIDAI 2021.4

東良美範士は、八段審査を意識していた若手の頃から自身の立合稽古を撮影し、次の稽古に活かすサイクルをくり返してきた。映像は自分のいつわりない姿を映し出す。自分の動き方がはっきり分かった時、上達の道筋が見えてきたという。

東 良美 範士八段

ひがし・よしみ/昭和32年鹿児島県生まれ。鹿児島商工高校から法政大に進み、卒業後愛知県警察に奉職。全日本選抜八段大会優勝、全日本選手権大会出場、全日本東西対抗大会出場など。平成30年に退職。現在、愛知県警察名誉師範、ネッツトヨタ名古屋剣道部師範、星城大学師範

どこが良くて悪いのか
動画分析で課題を明確にする

 私はかねてより、立合稽古や基本稽古を映像におさめ、それを見て次の稽古に活かすサイクルをくり返していました。八段審査受審の前からですから、もう何年になるか……。ですから、映像を撮影して反省に活かす重要性については、ずっと感じてきました。

 現在、何人かの方々から稽古の動画について批評してほしいという依頼をいただくことがあります。そこで、互いにどこが良いのか・足らないのかということをお話しして、また稽古に活かすように伝えています。今、お世話になっている名古屋の杉山道場に通っている一般の愛好家の方々とも時々そのようにしていますが、同じ年代の七段同士での稽古・上手の先生との稽古の映像を観てよかった点、反省点などを話して次に活かすと、次の稽古の目標・着眼点が明確になり稽古自体の練度が上がります。

 動画を観る上でどこをとくに注意して観ているのかというと、立合の中で、自分の良さを出しているかどうか、あるいは出せなかった場合はその原因、位攻めをしているか、といった理合などの部分です。

 ここで悪かった点の原因などが明確にならないと、練度が上がりません。「最近良くなったね」と褒められたとしても、どこが良くなったのか自分で具体的にわからないからです。

 どこが良いのか、悪いのかを客観視できるからこそ自分の剣道についてより理解が深まります。

 よく、「打ったけど昇段審査で不合格だった」という話を聞くことがあります。果たして、それは自分を客観視し、よく理解した上での言葉でしょうか。

 全国審査で求められる一本には、充実した気勢、適正な姿勢などの要件、間合や機会など高いレベルの要素が求められます。一足一刀の間合に入ってから打つまで、この刹那に攻め勝っているかどうか、ということになります。

 そこで大切になるのが「溜め」です。「我慢」という言葉に置き換えられることもあります。攻め勝つためには溜めがなくてはいけません。溜めがあるからこそ、相手に四戒を生じさせ、相手を引き出したり、居つかせたりすることにつながります。

 そのような場面で居着きをとらえたり、相手の面をすり上げて面を打ったりできれば、それは評価が高い一本になるでしょう。「相手をうまく遣った」ということになります。相手を遣うことが理解できないまま受審をしても、審査員の先生方には見抜かれるでしょう。

 映像を使う理由は、攻め勝つ剣道を実践するためのヒントを見出すためにあります。映像によって目標や目的意識が明確になると、「今日の稽古ではどこにポイントを置きますか」と問われた時、「これです」と、自信をもって明確に答えられます。

 多くの一般愛好家は仕事や家事などの仕事と剣道を両立しています。時間が限られていると思いますが、常日頃から基本を取り入れ、攻めどころの勉強をしてほしいと考えています。剣道はそうした「理屈」がわかるとより楽しくなります。その楽しさをしってもらいたいと考えながら指導に携わっているところです。

相手が攻め入ってきた刹那、表鎬を使って中心を割ると同時に溜めをきかせ、そしていつでも打つ体勢に入っている状態。動画を見返す際、どこでどのように対処していたのかを考えるとより長所・短所が浮き彫りになる

立合稽古の映像はココを見る



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