剣道の技

仕かけ技を徹底的に磨け(髙鍋 進)

2023年12月11日

2023.11 KENDOJIDAI

撮影=西口邦彦

全日本選手権、世界大会で第一線を走り続けた髙鍋進教士が、今年8月名古屋で行なわれた八段審査において初挑戦で合格を果たした。

ここ数年の稽古で心がけていたのは、「打って勝つ」ではなく「勝って打つ」剣道。その中で仕掛け技を磨いてきたという。

髙鍋 進 教士八段

たかなべ・すすむ/昭和51年熊本県生まれ。PL学園高から筑波大に進み、卒業後神奈川県警察に奉職。全日本選手権優勝2回(2連覇)、世界大会団体優勝3回・個人優勝、全国警察大会団体優勝・個人優勝、全日本選抜七段選手権(横浜)優勝3回など。現在、同警察剣道師範

 私は若い時分から、仕掛け技を中心に試合を展開していくケースがほとんどでした。今でももちろん大切にしている技です。

 特練員の頃は、よくいわれる「打って勝つ」の剣道で、相手を動かす(崩す)ことについてはまだまだ勉強不足であったと思います。しかし、指導者となり、高段位の剣道をめざすようになって「崩す」こと、とくに「勝って打つ」を実践するように意識するようになりました。このあたりの意識の変化が、八段審査受審の際にも影響があったのではないかと思います。

 攻め勝って打つ剣道への変遷をテーマに稽古を行なうようになって、「打つまでの過程」を重要視するようになりました。

「攻め勝って打つ」という言葉ですが、実際どのようなかたちが「攻め勝って打つ」状態なのかは深くわかっておらず、現在も試行錯誤を重ねています。

 私の場合、もともと剣先をさかんに動かした攻めなどは行なわなかったタイプでした。若い時分は「仕掛け」についても、相手の竹刀を「押さえる」「払う」「張る」といったことはあまり行なわなかったと思います。若手同士の試合は間合が遠く、かつ、展開が早いため「打てる間合に入ったらすぐに打てる身体能力」やそのための準備の方が重要視されがちだったためです。

 しかし、このような攻め方については所属の神奈川県警察の先生方からも何度かご指摘をいただいていました。とくに最近は、「『崩し』がないから、そのまま当たったようにしか見えない」 と、評価をいただくこともありました。そこで「『崩し』への意識を強くしよう」と、普段の稽古にも「押さえる」などの竹刀操作(崩し)を取り入れるように心がけました。たとえば打ち込み稽古、掛かり稽古などでは、以前はどちらかというと体の勢いなどを大切にしていましたが、「崩し」を意識的に取り入れ、機会を見出して(つくって)技を出すようになりました。この時「相手を崩した」と認識して打突した上で技を返されたとしても、打ち切って抜けるようにしました。

イメージとしては「打ち出す前に相手に四戒を生じさせ、ハッとさせる。わずかに動いた(崩れた)ところをとらえる」といった形になります。高段位の立合になると、大きく崩れるといった展開にはなりにくいと思います。ほんの少しの崩れを見逃さず打つ意識を大切にしています。相手を完全に崩すのは難しいと思いますが、100パーセント充実している状態の相手に対して1割程度でも崩す工夫を施し、120パーセントくらいの力で打ち込むつもりで行なっていました。

 たとえば、攻め合いの際の足さばきについては無駄な動きをしないようにし、打つべき機会と感じたら全力で打ち切る足を心がけました。「静(せい)」から一瞬で「動(どう)」へ、というイメージです。八段審査受審においては、歳での受審ですので、とくに足腰を鍛え、打突後の勢いを出せるよう打ち切るということも意識しました。

 このような意識が「攻めて崩して(攻め勝って)、打ち切る」稽古につながるのではないかと考え、現在も取り組んでいるところです。

仕掛けを行なうためには、まず充実した状態をつくること

 私は現在指導者の立場にあり(神奈川県警察剣道師範、世界大会日本代表女子コーチなど)、日ごろ若手剣士たちと関わっています。

 その中で、まず重要だと感じるのは礼法、蹲踞からおろそかにしないということです。指導の際は、所作事について毎回気を付け意識するように伝えますが、私自身も日頃から、無意識でも行なえるようにめざすことが大切だと感じています。こうした所作事、礼法は普段から行なっていないと、いざ試合や審査といった大事な場面で取り繕ったような動きになってしまいます。また、普段やっていないことを急に行おうとすれば、それはストレスになり、十分なパフォーマンスにつながりません。相手との対戦に集中する状況をつくりたいと考えて実践しています。気持ちの充実は、今回のテーマである「仕掛ける」を実践する上でも、大切なことだと思います。

 立ち上がったときの発声は「大きく」。すっと立ち上がった時、若手の頃こそ展開がはやく、すぐに打突してくる展開もありえたため、現在よりも足幅が広く、すぐに打てる体勢を心がけていました。ただ、高段位の剣道をめざすようになり、「さあ、どこからでも来い」という気持ちをつくって相手と対峙するように変化していきました。第三者から見られているイメージを大切にしました。

 稽古においても、その点についてはただ動作を行なうだけの運動にならないよう、切り返しや打ち込みも、立合の場を想定しながら、気持ちをつくって発声するなど心がけていました。

 これらを心掛けたのは「どのような場面でもいかに充実した姿を維持できるか」を重要視したためです。「打ち間」に入るまで、相手の攻めに対して崩れず、こちらが仕掛ける状態でいられるよう、心と体を整えるようにしています。

充実した体勢をつくる

立合の前から万全の状態をつくるために、礼法・所作事などから気を配ることが大切。蹲踞して立ち上がった時には気を充実させ、腹にためるイメージをもって真っ直ぐ構える。以前よりも左のかかとを下げるようになったという。「気持ちが真ん中にあるイメージ」を大切にしている

一足一刀の間合から、もう一寸、深く入って攻める



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