剣道の技 足さばき

若手剣道家たちが明かす「私の足さばき」

2020年12月21日

2020.8 KENDOJIDAI

稽古がなかなかできない時期こそ、足さばき。若手の一流剣士たちがそれぞれの取り組みを紹介する。

森 大樹

もり・だいき/昭和52年福岡県生まれ、42歳。福岡大学附属大濠高校から国士舘大に進み、卒業後教員となる。全日本選手権ベスト8、全国教職員大会個人優勝など。現在、母校福大大濠高校教諭。剣道教士七段

剣道上達に欠かせない足さばきの重要性

剣道上達において欠かせない足捌きは、体得できるまで正しい基礎を徹底し、相当な努力の継続が必要であると考えます。基礎基本動作・応用・反復・実戦など段階を踏み長い年月をかけて上達していくものであり、熟練された選手であっても試合の反省点として「足捌き」や「足使い」を挙げることが多くあります。

今回足捌きの重要性について、私の今までの経験の中で大切にしてきたことや、学んできことを4つのポイントに絞ってお伝えしていきたいと思います。

1つ目は、 「足腰の強化」と「体幹強化」です。 「足は第二の心臓」といわれるほど大切です。足腰の衰えは年齢を重ねるごとに誰にでも訪れることであり、私もそうです。しかし、なかなか衰えない選手は常に足腰を鍛えています。

体幹強化も、様々な動きの微妙なブレを無くし、俊敏性を高め、崩れない姿勢を作り上げるために非常に重要なものです。一本の条件である適正な姿勢の土台がつくられることになります。

2つ目は「基礎・基本動作の徹底」です。生徒に指導するうえで、この部分は一切妥協を許されないことだと考えています。剣道独自の動きである「摺り足」を徹底することは当然であり、切り返し、打ち込み、追い込みなど様々な基本動作も体に染み着くまで取り組むことが大切です。私がイメージとして意識していることは、 「小さく・鋭く・速く・滑らかに」ということす。注意事項としては①前後の足幅が広くならないこと。②右足の指先はタオルをつかむようにやや丸め、親指と中指を意識して前後すること。③左足は鋭く引き付けること。理想としては、右足を前に出して着地した瞬間には既に右足の土踏まず付近まで引き付けておくこと。④左足のひかがみ(膝裏)を極端に曲げて、踵が浮かないようにすること。⑤重心を前後の真ん中に置くこと。以上のようなことを意識しながら、私自身取り組み、指導に当たっています。

3つ目は「応用・反復練習で足捌き・足使いを学ぶ」ということです。実戦を想定し瞬間的な反応・判断の中でいかに正確な足捌き・足使いができるようになるかということと同時に、体の軸が崩れないことがポイントになります。

様々な練習法があると思いますが、私が常に生徒に対して意識させていることは、気持ちを充実させ常に「攻める」という強い気持ちを持つことです。その積み重ねで、いつでも打突できる「攻め足」が自然と身についてきます。逆に気持ちが充実せず、迷いや守りの気持ちが生じれば、足は止まり、その一瞬の隙を捉えられてしまいます。私は「気持ちと足は連動する」と指導しています。よってここでの練習で「気・剣・体」一致の技が増えてくれば、熟練度も増してきていると判断できると思います。

4つ目は「試合の中から学び得た自分独自の足捌きを見出す」ことです。いわゆる「勝つための足捌き・足使い」ということになります。ここでのミスはそのまま勝敗に直結するため、より丁寧かつ繊細に「小さく・鋭く・速く・滑らかに」を意識し、実行することが大切です。そして数多く試合を経験する中で、究極の課題である、自分独自の足捌きを見出さなければなりません。勿論それは並大抵の努力ではできません。長い年月をかけ日々意識して取り組み、また年齢を重ねるごとにその意識を変えながら、最終的に自分独自の足捌きというものを見出さなければならないと思います。

以上4つをポイントとして挙げました。これらの礎となったのが国士舘大学での4年間の稽古です。私は現在教員生活20年が経ちました。剣道も時代の流れとともに変化していくなか、私の中で一貫して変わらなかったことが足捌きに対しての考え方でした。昔から生徒には「足捌きは誤魔化せない。その人の今日までの根気強い意識・努力の表れである」 「足捌きができるようになるということは、剣道の土台が出来上がるということになる。土台なくして戦えない」 「諦めずに根気強くコツコツ努力し足捌きを体得できれば必ず生涯剣道の財産となる」と指導しています。今回このような機会を頂き、私自身まだまだ未熟で大変恐縮ですが、私ができることであればと思い執筆しました。

森 祐輔



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