KENDOJIDAI 2021.3
相手を動かして小手を打つための要素
川木一也(山形)
かわき・かずや/昭和52年福島県生まれ。左沢高から東北学院大に進み、卒業後山形県警察に奉職する。全国警察大会団体2部4位3部3位個人出場、全日本選手権ベスト、全日本東西対抗大会出場、全日本都道府県対抗大会出場、国体出場など。現在、同警察本部警務部人材育成課勤務・剣道特別訓練員監督。剣道教士七段
若い特錬員の頃は、常に足を使って相手よりも先に攻め込み竹刀を上下させたり開いたりと大きく間合を詰め、相手が防御する前に打つ、あるいは防御した後にスピードと手首の返しで防御する竹刀の角度と平行に竹刀を入れ込み強引に決めつけるスタイルでありました
しかし、加齢に伴いスピード・体力は必ず落ちてきます。したがって今、重視していることは同じ入りで何を打ってくるのか相手に直前までわからない軌道で打つ。つまり「相手が動いてから打つ」ではなく「相手を動かして打つ」ということです。
小手打ちは小手に変化する瞬間まで面の軌道で入り、打突時は相手の左足を踏みつける気持ちで強く踏み込み相手に正対するようにします。打突後は素早く体を寄せて相手に当たります。
小手はすべての打突部位の中で一番下にありますので打ち気を出してしまうと目線が下がってしまいます。目線が下がると上半身も前傾してしまい姿勢が悪くなってしまいます。また、小手は一番近い距離にありますので「攻め」を省略しスピードだけで当てにいってしまうと打突が軽くなってしまいます。よって、体は袴の腰板で腰を押し出すようになるべく水平に移動させ目線を一定にし、姿勢の崩れをおさえ、相手に対して真っすぐ入り打突します。さらに、相手からの応じ技、あと打ちをさせないためにも素早く体を相手に寄せていきます。たとえ自分が出した技が決まらない場合であっても間髪入れず次の技が出せる体勢を作ることが重要であると考えます。
構え
構えは常に打てる体勢、相手の動きに対して瞬時に対応できる体勢でなければなりません。右手は仕掛けるときは小指、薬指を締め(応じるときは親指、人差し指を締める)上から握り、左手は小指を柄頭に半掛けし小指、薬指を締め上から握り自分の体の中心からやや左に位置させ相手の左目に付けます。握りは緩めていると握り込む幅が大きくなり、その分、瞬間的な動きに遅れが生じることから左右の手ともにしっかり握るようにしています。
足さばきと攻め
有効打突を得るために「攻め」は必要不可欠です。この「攻め」なしに有効打突を得ることはできません。攻めは相手の心身のバランスを崩し十分な動作ができないようにすることです。気力による攻め、剣先による攻め、打突による攻めなどがありますが、わたしは特に「足による攻め」が重要であると考えます。自分の試合において打たれた場面を思い返すとやはり足が止まったところが多いように思います。足さえ止まらなければ多少の実力差があっても打たれることはないと思います。よって、どのような場面においても瞬時に打ち出せる体勢をとっておく必要があると考えます。
打突
打突は「発声」「左足の引き付け」「手の内の締めと弛緩」これを同時にかつ瞬時に行う必要があります。これを行うことで「体のキレ」「冴え」が生まれます。
上下の攻め
面を打ちたければ小手を意識させ、小手を打ちたければ面を意識させます。技がどちらかに偏ってしまうと効率的に有効打突を得ることはできません。こちらの攻めに対して相手が意識的に防御に入るのではなく、反射的な防御となるように直前までわからない軌道で入り相手を動かすことが重要であると考えます。
現在指導をしている県警の特錬員、道場生(一心館)には打つことよりも技前が大事であり、技前がしっかりしていれば有効打突はあとからついてくるものと指導しています。常に理合を大事にし、相互が納得する一本を求めてこれからも精進してまいります。
小手技を得意にするために考えたこと
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