剣道の技 足さばき

自習足さばき(矢野博志)

2020年8月24日

2020.8 KENDOJIDAI

剣道は足がいのち。竹刀四分運足六分とも、竹刀三分運足七分ともいわれる。いつまで続く稽古自粛、それならいまこそ徹底しよう自習足さばき。一流剣士が実行している足さばきの稽古を公開する。

足さばきは反復練習で体得する

「国士舘大学の恩師大野操一郎先生は、学生たちに八挙動の足さばきを繰り返し稽古させました。どんなときも基本を重視し、常に正しさを求めていました」と矢野範士は言う。対人稽古の自粛が続いている今、足さばきを見直す絶好の機会。矢野範士がその心得を説く。

矢野博志範士

やの・ひろし/昭和16年静岡県生まれ。相良高校から国士舘大学に進み、卒業後、同大学に助手として勤務する。昭和61年より同大学教授となり、平成23年に退職する。主な戦績として世界選手権大会2位、明治村剣道大会3位、沖縄県立武道館落成記念全国剣道八段大会3位、全国教職員大会優勝などがある。現在、国士舘大学名誉教授、全日本剣道連盟審議員。剣道範士八段。

構えの確認:自分にとって最高の構えをつくる

新型コロナウイルス拡大の影響で、剣道の稽古も自粛が続いています。わたしは60年以上剣道と向き合っていますが、こんなに稽古をしなかったのはもちろん初めてのことです。しかし、剣道を再開できる日は必ず来ます。稽古再開の際は慌てずに、徐々に稽古量を元に戻していきましょう。稽古ができる喜びは何事にも代えがたいものとは思いますが、激しい稽古で身体を壊してしまっては元も子もありません。

さて、基本稽古の指揮をとる時、開始時に必ず「自分にとって最高の構えを執ること」を伝えています。構えが正しくなければ正しい技は出せません。日々の稽古では常に自分自身が描く最高の構えを執ることを意識することが大切です。

剣術はすべて型稽古です。それぞれ真剣勝負から始まり、型稽古が導入され、その後、竹刀・防具が開発され、現代剣道の原型である竹刀稽古が始まりました。真剣勝負は当然、生命をあらそうものですから日常的にできるはずもありません。

そこで型稽古が生まれたと思うのですが、何を重視したのか。わたしは姿勢、構えだと考えています。正しい姿勢、正しい構えから正しい打突が生まれる。これがわたしの剣道観です。気剣体一致の技、さらに心気力一致の技は正しい構えから生まれることを強調しておきます。

正しい構えを意識させる前に「どこを打つか」ということばかりを教えると剣道が崩れてしまいます。剣道は「どこを打つか」 (打突部位)よりも、 「いつ打つか」 (機会)のほうが大切であり、機会的確にとらえるにはやはり正しい構えで、正しく竹刀を振り、その結果、有効打突につながるのです。

ですから各教本には構えの要領として「力まず自然体で立ち、剣先は相手の喉元につける」 「背筋を伸ばし、肩の力を抜いてリラックスする」 「左拳がいつも身体の中心にあるようにする」など記されていますが、教本に書いてある通りの構えができることをめざしていくことが大切です。

正しい構えができていないと、剣道が間違った方向に行ってしまいます。 「悪癖は育つ」とは言いえて妙です。日頃の稽古ではまず構えをしっかりとつくり、足さばきや素振りをするようにしましょう。

自分にとって最高の構えをつくる

八挙動の足さばき:‌両足に負荷をかけて安定した足をつくる

国士舘大学剣道部は、剣道指導者となる人材を育成することを目的にしていますが、基本動作の修得にもとくに時間を割いています。わたしが入学した昭和30年代はまだ部員数が少なかったことから足さばきや素振り、空間打突の稽古にもとくに時間を割いていました。



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