昨年、コロナ禍により中止となった高校生の夢舞台・春の全国選抜。今年は徹底した感染防止対策のもとに開催され、ひさびさに高校日本一が決定した。新型コロナウイルスによって剣道もさまざまな変化が求められる中で、強豪校はどのようにしてチ ーム力を高め、全国屈指の力を蓄えたのか。全国選抜で決勝まで勝ち上がった男女上位2校の現在の取り組みから、強くなるための道すじを探る―。
桐蔭学園(神奈川)島原(長崎)
中村学園女子(福岡)筑紫台(福岡)
高校剣道時代 Vol.1
構成=寺岡智之
写真=西口邦彦
高校剣道の歴史を遡れば、これまで時代をつくった学校というのがいくつかあった。PL学園しかり、阿蘇しかり、そして近年であれば九州学院しかりである。そこに肩を並べるかたちで、今、女子の高校剣道を牽引しているのが「中村学園女子」である。平成28年にインターハイ初優勝。以降、全国選抜、魁星旗、玉竜旗、そしてインターハイと、高校4大大会で優勝を積み重ねてきている。他校にしてみれば、日本一を手にするには、どこかで中村学園女子を倒さなければならない。全国の高校の目標となっているわけだが、その圧倒的な強さで、現在、インターハイは4連覇中だ。
そしてもう一つ、中村学園女子を語る上で忘れてはならないのが、卒業生の活躍である。2018年に韓国で開催された世界選手権では、当時高校3年生だった妹尾舞香選手が日本代表に選出。そのずば抜けたセンスで日本代表の中核を担った。そして、奇しくも妹尾選手と同学年で切磋琢磨してきた諸岡温子選手が、3月に開催された全日本女子選手権で初優勝。この勝利には岩城規彦監督も驚きを禁じ得なかったそうだが、2位にも同校卒の山﨑里奈選手が勝ち上がり、高校剣道だけでなく、社会人レベルにおいても中村学園旋風は続いている状況だ。
主な戦績
インターハイ 優勝4回、全国選抜 優勝6回、玉竜旗 優勝8回、魁星旗 優勝3回
主な卒業生
リベンジを図った全国選抜の中止
リモート稽古でお互いを確認
全国選抜においては、平成20年の初優勝以降、コンスタントに優勝を積み重ね、現在までに6度の優勝を果たしている。その流れの中で、一つ落とし穴があったのが平成30年開催の第28回大会。ここまで2連覇中の中村学園女子だったが、この年は県予選で敗退し出場権を獲得できず、悔しい思いをした。その鬱憤を晴らすべく稽古を重ねていたところに訪れたのが、新型コロナウイルスである。「全国選抜の中止が決まったときの選手の落ち込みようは相当でした。日本一を目指して中村学園に入学してきていますから、当時の3年生は本当にかわいそうだったなと思います」
と岩城監督。全国選抜は中止になったが、インターハイは開催されることを信じて稽古に取り組んだ。とは言っても、非常事態宣言等もあり、学校の道場での稽古はできない。そこで活用したのがリモートによる稽古の共有である。
「学校に登校ができなくなったので、部員たちはみな実家に帰省させました。大会があることを信じて、リモートで1~2時間程度、毎日素振りをしたりトレーニングをしたりしていました。お互いが頑張っている姿を見ることで、なんとかモチベーションを保っていたような状況です」
しかし、選手たちの願いもむなしく玉竜旗やインターハイといった目標としていた大会は中止を余儀なくされた。ここからは、3年生は沖縄で開催予定だった「高校生想代」に向けて、新チームは秋の新人戦に向けてスタートを切ったわけだが、3年生の心意気に後輩たちは胸を打たれたようだ。現在キャプテンを務める松永樹音選手は言う。
「先輩たちは大会がなくなって悔しかったはずなのに、新チームのために指導にあたってくれました。私も新キャプテンとしてまだまだできていないことがいっぱいあって悩みもあったのですが、笠日向子先輩をはじめ、3年生のみなさんが親身になって相談にのってくれました。絶対に、先輩たちのためにも結果を残したいと、私たち後輩も気持ちが一つになったと思います」
これまでどおりとはいかないまでも、できる範囲内で稽古をやり切り臨むはずだった全国選抜予選は中止。月に開催された新人戦の大会結果から、中村学園女子と筑紫台が全国の舞台へと進むことになった。
次にいつ試合できるか分からない
だから一戦一戦を一生懸命に
コロナ禍で背負ったさまざまな思い、前回大会に出場できなかった悔しさ。強い気持ちで臨んだ全国選抜は、緒戦から厳しい戦いの連続だった。
残りの記事は 剣道時代インターナショナル 有料会員の方のみご覧いただけます
No Comments