2018.10 KENDOJIDAI
勉強も剣道も最善を尽くす
「文武両道」こそ勝利への道
剣道界に燦然と輝く「島原」の二文字。例年、全国大会で当たり前のように上位を席巻する同校は、現在校長職を務める渡邉孝経氏が赴任してから急激に成長を遂げた。部員に課すのは「文武両道」の徹底。「何事にも最善を尽くして取り組むことが、勝利につながっていく」と渡邉氏は言う。つねに結果を出し続ける島原高校剣道部は、いったいどのような稽古を積み重ねているのか―。
わずかな時間も無駄にしない準備運動の代わりに体幹を鍛える
一般的な剣道の稽古と言えば、準備運動を終えて素振りに入るが、島原高校の稽古は体幹トレーニングからはじまる。トレーニングの種類は多岐にわたるが、取材当日は四つん這いになって床を這うように動くものであったり、雑巾で足場を不安定にして手だけで前に進むもの、竹刀を使用したY字バランスのようなものが行なわれていた。
「体幹を鍛えることは、基礎基本を習得するための土台となります。体幹を鍛えておけば、体勢の崩れが少なくなり、打突にも冴えが生まれます。ただし、島原高校は朝稽古もなくトレーニングの時間を充分にとることができないので、このように稽古のはじめに準備運動の代わりとして行なうようにしています」
打突時、 打突後のフォームを意識し正しい打突姿勢を身につける
体幹トレーニングに続いて行なわれたのは素振り。ここも体幹トレーニングと同様、多彩な素振りが実践されていた。部員の傍らには竹刀、重い木刀、軽い木刀の三本が用意されており、素振りの種類によって使い分けられていた。
「素振りに木刀を使用するのは刃筋を意識させるため。重さに違いを持たせるのは、素振りで正しいフォームを身につけるためです。重い木刀は筋力や打突力を向上させるには有効ですが、力まかせに振ろうとするのでフォームに崩れが出てしまいます。そのために軽い木刀を使用して、フォームを確認させます。素振りの種類が多いのは、剣道にある四つの打突部位それぞれにフォームがあるからです。フォームを確認しながら数多く振り、素振りを実戦に直結させることを心がけています」
身体をさばきながら行なうタイヤを打ち手の内を鍛えて身体の使い方を知る
タイヤ打ちは渡邉校長がとある少年道場で行なわれていたものを持ち帰り、高校生用に改良したものである。取材当日に行なわれていた稽古法は大きく4種類。最初は頂点につけられた小さな印をめがけてタイヤを打ち込んでいく。
「一本一本集中して、印に向かって竹刀を振り下ろしていきます。印を狙うことで、稽古や試合でも確実に有効打突になる打突を身につけることができます」続けてタイヤの配置を変えて行なわれたのが、身体を横にさばきながらの連続打ちである。これも打突部位を意識しながら、素早く横に移動しつつ打突していく。
タイヤを交互に配置したものは身体を左右にさばきながら打ち込んでいくため、体幹づくりにも一役買っているようだ。最後は小手の位置と面の位置にタイヤを配置し、連続で打ち込んでいくものを実践していた。取材当日は那珂川北中学校が出稽古にきていたため、方法をレクチャーしながらの稽古となったが、高校生はしっかりと手の内を利かせながらリズミカルにタイヤを打ち込んでいた。
「小手面の連続打ちは、通常の竹刀よりも重いものを使用して行ないます。この竹刀で通常の竹刀と同じように打ち込むことができるようになれば、手の内の利いた冴えのある打ちが身につきます」
剣道の土台となるのは足さばきつねに適正な姿勢を維持する
渡邉監督が「剣道でもっとも大事な部分であり、高校剣道には欠かせない」とまで言うのが、足さばきの稽古である。一昔前までは少年指導の場でよく見かける光景であったが、現在はどこの強豪校も足さばきを重視して時間をかけて行なっている。
「体幹トレーニングにも関連してきますが、足さばきによって適正な姿勢を維持しておかなければ正しい打突はできません。足さばきの稽古は充分に時間をとって行なうようにしていますが、それ以外の部分でも、一日の稽古を通じて足を止めず、つねに足を鍛えることを意識させています」稽古内容は、前進後退の足さばきや踏み込み足を取り入れたもの、円を描くように足を使うものなど多岐にわたっていた。
打突後の備えを忘れずつねに打ち出せる足構えをつくる
稽古の中盤で行なわれていたのは追い込み稽古。まずは四人が縦に並んで元に立ち、連続で打ち込んでいくものからはじまった。面打ちだけでなく、小手打ちや胴打ちを織り交ぜたものも行なわれていた。
「この稽古で大事になるのは、打突後の 構えです。一人目の面を打ったらしっかりと一度構え直してから次に向かう。そうすることで隙がなくなり、反対に打突へと瞬時に移行することもできるようになります」
追い込みは一般的な面や小手の連続打ちのほか、道場を斜めに使って相手の打ち終わりに狙いを定めた稽古なども行なわれていた。総じて意識づけられていたのは、足を細かくさばいて体勢の崩れを抑制すること。つねに打ち出せる足構えが維持されていた。
取材&構成◆寺岡智之
撮影◆西口邦彦
動画撮影◆メディア・ゲート・ジャパン
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