KENDOJIDAI 2021.9
「正しい握りを実践し、打ち切ることを意識すれば打突に冴えが生まれる」と、東良美範士は語る。できていると思っていても、実際はできていないのが握りのような基礎基本の部分。東範士が実践してきた打突に冴えを生むために稽古法を紹介してもらった―。
東良美 範士八段
ひがし・よしみ/昭和32年生まれ、鹿児島県出身。鹿児島商工高校から法政大学を経て、卒業後、愛知県警に奉職する。愛知県警主席師範を最後に退職し、現在は愛知県警名誉師範、星城大学剣道部師範、ネッツトヨタ名古屋剣道部師範等を務める。主な実績として、全日本選抜八段優勝大会優勝、全日本選手権大会出場、全日本東西対抗大会出場、国体優勝等がある
正しい握り方を実践する
手の内と打突の冴えには密接な関係があります。冴えのある打突を求めるためにも、まずは自身の手の内を見直してみると良いと思います。
手の内とはいわゆる竹刀の握り方のことですが、なぜ手の内という言葉で表現されているのか。それは、かたちとしての握り方以外にさまざまな要素が含まれているからだと思います。握り締め方一つとっても、ただ教科書どおりに握っているのが初心者だとすれば、高段者は剣先に冴えを出すために、もっと細かい掌中の作用を心がけています。これらは日々の鍛錬によって自然と身についていく部分でもありますが、要点を意識しておくのとしておかないのでは、稽古の成果に差が生じてきます。ここではいくつか、私が実践してきた稽古の話を用いながら、そういった要点についてお話できればと考えています。
まず竹刀の握りについてですが、ここで参考にしていただきたいのは『剣道指導要領』に記載されている正しい竹刀の握り方です。この原点をおろそかにしてはなりません。左手小指で柄頭いっぱいを握り、小指、薬指はしっかりと締め、中指は軽く締める。人差し指と親指は軽く添える程度。これが正しい握りです。右手の握りも同じ要領ですが、右手はあまり強く握ると細かい竹刀操作の妨げともなりますから、昔から言われているように、生卵や小鳥を握るような心持ちで軽く締めます。強く握れば生卵は割れてしまいますし、小鳥は死んでしまいます。
打突時の握りに関しては「茶巾しぼり」という教えを受けたことのある方も多いと思います。ただ、実際に茶巾を絞った経験のある方はなかなかいないでしょう。私は指導をする際に、水を含んだ手ぬぐいを絞るようなイメージを持つとよいと伝えるようにしています。雑巾しぼりのようにすべての水を絞りきってしまうのではなく、左手は引き手、右手は押し手の要領で、軽く水気が残る程度の強さで締めるのがちょうど良いかと思います。目安としては、弦の延長線上に両手の親指と人差し指の分かれ目がくるのが正しい握りですが、これがズレてしまっていると、強く絞りすぎたり、または竹刀を横から持っている証左だと思いますので、よくよく自分の握りを確認していただければと思います。
顎まで打ちきる素振りを実践する
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