冴え 手の内

手の内と打突の冴え(香田郡秀)

2022年10月17日

KENDOJIDAI 2021.9

撮影=西口邦彦
構成=栁田直子

冴えと勢いは会心の一本に欠かせない要素だ。筑波大教授の香田郡秀範士は「有効打突の要件やその要素を理解すれば、おのずと冴えや勢いについて勉強できる」と語る。

なぜ強いのか。そのことがわかるようになれば、もっとあなたは強くなる。

香田郡秀範士

こうだ・くにひで/昭和32年長崎県生まれ。長崎東高から筑波大へ進み、卒業後長崎県高校教員を経て母校筑波大教員となる。全日本選手権3位、世界大会個人優勝、全国教職員大会優勝など。現在、筑波大学体育系教授・同剣道部長、全日本剣道連盟常任理事、同試合・審判委員長など。

 稽古にて、「冴えがない」「勢いがない」というアドバイスをいただいた経験があるという方は、多いのではないかと思います。

「冴え」と「勢い」は、一本を決める際に一番求められる要素の一つではないかと考えています。高段位の審査で合格される方の立ち合いを拝見していると、やはり打突に冴えや勢いがあると思います。たとえばですが、審査会場というのは大概大きな施設ですが、八段合格者の打突は遠くからでも、「ドーン」といった大きな音が聞こえます。これは試合でも同様で、ドンッと大きな音とともに鮮やかな一本が決まることがあると思います。

 こうした目を奪われる・感動を与えられる一本には「冴え」「勢い」があります。

 では、どうしたらそのような「冴え」や「勢い」は身につくのでしょうか。

 そもそも、「冴え」とは、「勢い」とはどういったものでしょうか。よく「冴えがある」「勢いがある」と言われている人の打突を拝見していると、打突の機会のとらえ方や充実した気勢、適正な姿勢、手の内の冴え、足遣いなどが理にかなっています。ですから、一部が良くても体勢などが悪ければ、「冴えがある」ようには見えないでしょう。「冴え」や「勢い」は剣道におけるあらゆる総合的な要件・要素が影響しているものです。

 つまり「剣道試合・審判規則」には冴えや勢いが生まれるためのヒントがありますので参考にしていただきたいと思います。正しく打つことが冴えや勢いにつながり、熟練度に応じて求められる完成度の程度は異なるものですが、とくに高段位をめざすのであれば、その内容を意識して稽古を行なうことが大切です。読まれたことがない方は読むことをお勧めします。

 良く「あてっこ剣道」と言われる人がいます、「あてよう」という気持ちが強いと前傾姿勢になりがちです。頭からから突っ込むような体勢の打突になることが多く、その場合上半身に力が入りやすいので刃筋正しく打つことや、適正な姿勢をもって打つことができません。もちろん冴えのある打突も身につきません。

 また、手の内がかたく、殴りつけるような打突は打たれると痛いです。しかし手の内が柔軟に使えると、力強くても痛くはなく、むしろ心地よいくらいの印象があります。これが冴えた打突であり、打ちが強いのと痛いのは全然違います。

 有効打突の要件やその要素を理解し、稽古で工夫研究すればおのずと「冴え」や「勢い」に近づいていきます。それは、いま読者が考えている理想の剣道に近づけるということでもあります。

大きな打ち・小さな打ち。打ち方の違いを学ぶ



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