インタビュー ヨーロッパ

第32回ヨーロッパ大会 男子個人戦優勝 ルカ・プシェヴウオツキ

2023年6月9日
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第32回ヨーロッパ大会(EKC)男子個人の部は、フランスのルカ・プシェヴウオツキ選手の二連覇で幕を閉じた。190cm台の長身から繰り出される豪快なメンが印象的で、一本を取られてもすかさず取り返す冷静さを持ち合わせている。

強豪国フランスで6歳の頃に剣道を始めたというルカ選手。なぜ剣道を始め、どのような道筋を辿ってきたのだろう。EKCに向けて行ってきた準備、今後の展望について14の質問を投げかけた。

ルカ・プシェヴウオツキ(Lucas Przewlocki)

1998年フランス生まれ。6歳の頃にパリのBudoXI(ブドー・オンズ)で剣道を始める。フランス剣道チームには8年間所属し、代表として選出されて2年目に入る。2014年フランスで開催されたEKCにジュニアの部で初出場、その後、2022年ドイツにて開催された第31回大会、フランスで開催された第32回大会にて大人男子個人の部で優勝を果たす。

1. 剣道を始めたきっかけは?

6歳の頃に、母の勧めで始めました。私の母は日本人で、武道が持つ価値観に魅力を感じていたようです。

2. どこで剣道を始めましたか?

BudoXI(ブドー・オンズ)で始め、18歳まではジュニアクラスで木村先生にご指導いただきました。最初は週に1度でしたが、徐々に週2回、稽古するようになっていきました。 その後、大人のクラスに移動し、ルヴァロワでの代表練習にも参加するようになりました。剣道を始めてから、今年で19年になります。

3. EKC前にどんな準備をしましたか?

フランスチームの稽古に参加するようになってから、EKCに向けて特別な準備をしたことはありません。週に3〜4回、道場での稽古に取り組み(そのうち1日は、追い込みやかかり稽古など、フィジカル面の強化に重点を置いたものです)、ジムにも通っています。それにプラスで、月に1度の代表練習ですね。特段変わったことはせず、年間を通して一貫した稽古・トレーニングを続けることを心がけています。

また、剣道の動画もよく観ます。これは、私にとって稽古の一つです。なぜなら、日本と比較してヨーロッパには強い剣道家が少なく、動画を観ることで私たちにないものを知ることができ、日々の稽古に活かせるためです。動画からは技術だけではなく、強い剣道家がどのようにそのレベルに達したのかを研究するようにしています。

4. 動画をどのように活用しているか、もう少し詳しくお聞きしてもいいでしょうか?お気に入りの動画があったら教えてください。

ヨーロッパにはない、さまざまな剣道のスタイルを知ることができるので、自分が慣れていない剣道のスタイルに対するイメージトレーニングが可能だと考えています。

また、自分が知らなかった多くの新しいテクニックを見つけられる点も魅力です。技術に関することは全て観察して、稽古で試して自分のものにしようと、試行錯誤を重ねています。

例えば、打突前の攻め、間合い、竹刀操作、足、機会などですね。本当にたくさんのことを動画から学べると思います。

特にこれが好き、という動画はないですね。

5. 普段の稽古で心がけていることは?

稽古では、たくさんのことを考えて改善していかなければならないと考えています。なので、一つ一つの稽古に集中し、出来るだけ多くのことを学び、出来るだけ速く成長することを心がけています。

6. EKCでもっとも印象的だった試合と、その理由を教えてください。

どの対戦相手もとても強くて、全ての試合に重要な局面がありました。なので、一つを選ぶことは難しいですね。

7. 団体戦の決勝戦に臨む前にどんなことを考えていましたか?

集中を切らさないようにしていました。あと何試合あるのか、トーナメントは何位なのかは考えず、次の対戦相手にだけに集中し、終わるまで余計なことは考えないようにしていました。

8.個人戦決勝の相手は、同じくフランス代表チームのオリビエ選手でした。試合前にどんなことを考えていましたか?

自分の欠点を抑え、彼の得意技を封じることを考えていました。最後は延長戦になり一本勝負だったので、とにかく集中しました。

9. EKC全体を通しての所感を教えてください。

ヨーロッパ全体のレベルは上がっているように感じます。 励みになるし、これからのヨーロッパ剣道が楽しみです。

10. 強豪選手のなかにはプレッシャーに苦しむ方もいます。剣道を今でも楽しんでいますか?

試合では多くのプレッシャーを感じます。でも、集中することで、それを抑えることができます。普段の稽古は、楽しいですね。新しく学んだことをすべて試そうと思ってます。

11. これまで、日本で稽古をしたことはありますか?

小さい頃、東京の大義塾や横浜の小さな道場で稽古をつけていただいていました。2019年に私は学校のインターンシップの一環で日本に4ヶ月滞在しました。その時に、佐賀大学剣道部で稽古する機会をいただきました。ほぼ毎日、自由稽古に参加し、 自分なりの剣道を見つける素晴らしいきっかけになりました。

最近は国士舘大学、慶應義塾大学剣道部の稽古に参加させていただきました。強い相手と稽古ができるのは、とても良い経験でした。私が日本への出稽古に求めているのは、まさにこのような経験です。

12. ヨーロッパと日本の稽古にどのような違いがあると思いますか?

まず、ヨーロッパでは剣道はアマチュアスポーツ、いわゆる「趣味」です。たとえハイレベルな選手であったとしても、私たちはみんな仕事を持っていてその合間に稽古を積まなければなりません。

また、環境面の違いもあります。剣道に適した床、稽古の機会、剣道人口も日本に比べると少ないため、さまざまなスタイルの剣道に触れる機会も少ないでしょう。個人的には、こういった足りない部分を少しでも補うために、定期的に日本で稽古するようにしています。

一方で、環境面が整っていて人口も多いからこそ、日本の選手たちが感じるプレッシャーは凄まじいものだと思います。

また、技術面での差はこういった理由以外にもあると考えています。日本には、努力し決して諦めない文化があり、それが技術にも影響を与えているのではないでしょうか。

しかし、フランス代表チームはこの差を少しでも縮めるために、努力と粘り強さを養う稽古に取り組んでいます。

13. 今後、EKCやWKCにおける目標はありますか?

WKCでは、フランスチームがこれまで培ってきた「フランスの剣道」を表現したいです。

14. ボーナスクエスチョン:面を打つときに、何を考えていますか?

感覚に近いかもしれませんね。「打てる」と思った機会を逃さず打っています。

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