インタビュー ヨーロッパ

ドイツ代表チーム 森㟢 誠一郎コーチ

2023年6月17日
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今回のEKCは、活躍した選手たちにこれまでの剣道ヒストリーや、目指している剣道、感じる課題を聞いてきました。この記事では、ドイツ剣道代表チームのコーチである森㟢先生に大会全体を通して感じたこと、ヨーロッパ剣道について感じる課題についてうかがいました。

1.これまでの剣道のキャリアについて教えてください。

私は福岡県出身で、小学2年生(8歳)の時に剣道を始め、筑紫丘高校、広島大学へと進学。ずっと剣道ばかりしてきました。大学の時は、中四国学生剣道選手権で優勝したこともありしたが、社会人になってすぐの20代は剣道から遠ざかっていました。

30歳を過ぎた頃にインドネシア、タイにトータルで十数年駐在し、現地の剣士や日本人の愛好剣士との交流を通して、海外で剣道の面白さにすっかりハマってしまいました。

仕事は、最近のドイツ駐在含めて、海外での勤務が多いですね。

2.ドイツ代表のコーチを任されるまでの経緯を教えてください。

ドイツでは、デュッセルドルフ日本クラブ剣道部に所属していて、当初は、いち駐在員として皆さんとワイワイ楽しく稽古をしているだけでした。

転機となったのは、ある日「NRW州(デュッセルドルフのある州)で強化稽古があるから指導も含めて来てくれないか」とお誘いを受けたことです。そこで出会ったのが、現ドイツ剣道連盟の会長の息子さんである、ロベルト・クンプさんでした。ちなみに彼も、ドイツチームのコーチです。

どうやら、ドイツにはブンデストレーナー制度というものがあって、コロナ前までは毎年警視庁、各県警を中心に40代の七段あたりの先生が、2ヶ月程度長期に渡りドイツに指導に来られ、その流れで欧州大会のコーチもされていたそうです。

ところが、コロナでその派遣が1年ほど中断してしまいました。そんな折、コロナ中にドイツにいてたまたま年齢的にも段位的にもハマった私が、とりあえずこのブンデストレーナーという繋ぎ役に呼ばれたという経緯です。

歴代ブンデストレーナー名簿がありますが、高名な先生方ばかりで「私ごときが」と恐縮するばかりです。

3.今回のヨーロッパ大会の所感を教えてください。

とにかくフランスの一人勝ち。昨年もフランスが強かったですが、男子は特にその差が広がったと感じます。1位がフランス、その下に同率2位でポーランド、ベルギー、イタリア、イギリス、ドイツなどがいる感じでしょうか…。

4.世界大会に向けてどのような稽古をしていく予定でしょうか?

フランスのトップ選手たちとの稽古・交流をして欲しいと思っています。色んな歴史もあってか、ドイツは他の欧州各国と遠征などを通じて交流する機会はあっても、なぜかフランスとは一切剣を交えていないようです。少なくともここ数年は。

意識を上げていくためにも、フランスチームと頻繁に交流ができたらと思っています。

5.ドイツを含めヨーロッパ剣道は今後どのような点を強化していく必要があると感じますか?

少なくともドイツチームに関して言えば、打つべき機会というところをもっと洗練させるべきかと思っています。まだまだ体力的なスピードに頼って、ある意味運任せで試合をしている部分が多く見受けられます。

その原因と言えるかもしれませんが、ドイツのトップ選手たちは、日本留学などもしたりして本人たりの実力はある程度高いのですが、一方で、彼らの自分の道場では自分と同等レベル以上の選手たちと切磋琢磨して稽古する機会が少ないような気がしています。

それぞれの選手が各地方にバラバラに散らばっていますし、その地域においては相手になる選手がいない。結果、強くなるためにある程度体は鍛える方向に行くのでしょうが、我慢、練り合い、捨て身と言った、打つべき機会を探究する稽古が不足しているような気はしています。

6.逆に、ヨーロッパ剣道だからこそある魅力や強みはなんでしょうか?

日本に比べて試合のテクニックに拘泥するという部分は少ないと思います。ある意味、素直で、正々堂々試合をしてくれる選手が多い気がします。

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