インタビュー

刀剣は我魂なり。竹刀は日本刀

2023年8月28日

2023.9 KENDOJIDAI

取材・構成:山崎永美子
翻訳:

 たはら・ひろのり/昭和年、熊本県生まれ。八代高校から警視庁に奉職する。警視庁副主席師範、関東管区警察学校教授を歴任。現在、三井住友百練館道場名誉師範、益子大使、セントラル警備保障師範。剣道範士八段。

知っているつもりの竹刀の歴史

 「竹刀」という言葉は日本書紀にすでに登場しており、かなり古い時代から使用されていたことが分かります。しかしこれは現在の剣道用具の「竹刀」とは異なるもので、表記も「アヲヒエ」と、臍の緒を切る用具だったそうです。

 それに対して剣道の「竹刀」の原型が登場したのは戦国時代から安土桃山時代頃のこと。上泉伊勢守信綱が竹を十六~三十二本程に細かく割ったものに皮の袋を被せた「袋撓い」を創作し、「シナエ」「シナイ」という言葉で使用されていた模様です。現在のような四枚の竹を結束した竹刀は、江戸中期頃から一刀流の中西忠蔵や、直心影流の長沼四郎左衛門等によって剣道防具とともに完成したと言われています。当時の竹刀は、木刀や刃引きと同じ三尺三寸~六寸程度の長さが常寸でありました。

 そして江戸末期の天保時代に、柳川藩(福岡県)の大石進という剣客が、五尺余りの長い竹刀を提げて全国各地の道場を破竹の勢いを以って破って回り、遂に「江戸の三傑」と呼ばれたうちの一人、北辰一刀流の千葉周作と剣を交えたときのこと。大石の五尺余りの竹刀に対し、千葉は四斗樽の蓋を鍔として応じたという逸話が残っています。

 大石の出現以来、各剣客の中で四尺~六尺の長竹刀使用が流行し、遂には遊戯的な「剣術」になってしまいました。これを憂いて、時の講武所師範であった男谷精一郎信友は、「講武所規則覚書」に、「撓(しない)は、柄共総長曲尺(かねしゃく)にて三尺八寸より長きは不相成」と決めました。これが現在の竹刀の長さの基準となっているという説が有名です。

竹刀は日本刀の心構えで扱うこと

 では竹刀はどう選んだら良いのでしょうか。以下四点に注視してみてください。

・良質の竹は、寒竹の真竹で目が詰んでいて節高で無いもの。
・穴が四角で歪んでない、加えて虫食いや横裂等が無いもの。
・五節のもの。竹刀の五つの節は、五常「仁、義、礼、智、信」を説き、刃部の三つの節は「天、地、人」を表す。天の節(物打ち)は、五、六寸位あるものがバランスが良い。
・古来言われている「軽い竹刀は重く、重い竹刀は軽く使え」の教え。自己の力に応じた重さのものを選ぶべし。

 古来日本では、「つるぎ、太刀」を「三種の神器」の一種として崇め拝してきました。日本刀を魂の籠った極めて尊いものと見てきたわけです。特に剣道を習う者には「刀剣は我魂なり、我心を知らと欲せば、我帯びる刀剣をみよ」と言っていたそう。従って、竹刀を執る者は、日本刀に接するのと同様の真摯な態度、心構えが大切であると私は考えています。

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