KENDOJIDAI 2024.5
記事=宇賀元紀(高知県剣道連盟)
高知県剣道連盟では剣道人口減少に危機意識を持っており、その歯止めをかけるべく、韓国中高生ナショナルチームとの交流企画を実施した。草の根交流から始まった企画を紹介する。
高知県の剣道人口
10年間で43%減少の危機
高知県では、少子高齢化が他県よりも15年先行しており、毎年8千人以上の人口が減少しています。その結果、剣道界においては平成22年から令和2年の10年間で中学生の剣道競技人口は約43%の大幅減となっています。他の競技と比較してもこの減少率は突出しており、県内の主要高校生で剣道をしている子供の約8割が親族に剣道関係者がいる家庭であることがわかっています。さらに県剣道連盟全体の5割以上を50歳代~70歳代が占めており、20年後には連盟登録者数は半減、若手女子の競技者数の激減などが予想されています。
さらに現在、高知県高校生の全国大会予選では、5人編成で試合に出場できる学校が4チームしかなく、20歳代女性の連盟登録者数がわずか十数名です。剣道を大学進学後続ける生徒は高校生全体の1割、そのうち高知県へUターンして就職し、剣道を続ける女性は数年に一人という危機的な状況が続いています。
ある高校生の発案
剣道ツーリズムと地方創生
この現状に歯止めをかけたいと願い、色々と策を練っていたところ、一人の高校生が剣道ツーリズムによる地方創生と剣道人口の増加について企画立案したことがきっかけとなり、最終的には韓国生徒代表チームの誘致に繋がることになります。その具体的内容はインバウンド誘致と、高知県でオープン国際大会化を図ることで、メディアや行政を巻き込んだツーリズムを確立するというものでした。これを実現することで今まで剣道に興味を示すことのなかった20歳~30歳代の若い保護者層に対し、「日本の剣道が世界で求められている」ことを知らしめ、日本人のアイデンティティを再確認できるのではないかというものでした。この高校生の発案がきっかけになり、現状への危機感を抱いた剣道家たちがプロジェクトチームを発足させ、高知県県道連盟の主催行事として計画が進み出しました。
韓国ナショナルチーム
高知県誘致が実現する
今回、韓国ナショナルチーム(中高生)が来県するにあたっては、以下の流れがありました。まず、プロジェクトチームメンバーが所属する高知県の草剣道コミュニティである「土佐剣交会」と東京を拠点にアジアを中心に世界で剣道コミュニティを形成する「アジア剣道クラブ」が連携して、剣道の合同稽古や高知のよさこい祭りへの参加など国際交流を目的とした剣道交流イベントを本年8月に実現しました。この交流をきっかけに数週間後の9月初旬、アジア剣道クラブの大島朗央先生(栃木・剣道教士八段)から土佐剣交会員のところに一本の電話が入ります。その内容は「年内に韓国ナショナルチーム(中高生)の遠征を受け入れることはできないか」というものでした。
高知県の食文化やおもてなしを気に入ってくださったこと、本年、高知高校男子がインターハイでベスト8に入る好成績を残したことがその理由でした。高知県では毎年12月に全国から男女100チームが集まって剣道競技の向上を図る「全国高等学校建依別(たけよりわけ)錬成大会」が開催されていることから、県剣道連盟や高体連の理解と協力を得て、正式に韓国側からの依頼文を受けた上で、同大会に韓国生徒選抜チームナを誘致することが決定しました。
国際交流イベントの概要については以下のとおりです。
1、第31回全国高等学校剣道建依別錬成大会
西日本を中心として日本全国から男女約100チームが高知市に集まり、試合稽古を中心とした錬成会を実施(編集部注。建依別《たけよりわけ》とは『古事記』に記された土佐の支配神)。
2、レセプション
高知県で剣道をする高校生の取組み発表及び意見交換。かつおのたたきわら焼き体験。総合クラブとさ青龍によるよさこい踊り(正調踊りの体験交流)。
3、交流稽古会
高知県内で剣道をする小中生徒との合同稽古や全員でのダンス交流イベントの実施。
男女チーム参加
剣道建依別錬成大会
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