2025.10 KENDOJIDAI
撮影=笹井タカマサ
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「剣道はまずは教本に書かれていることを忠実に実践できるようになることが大切です」と全日本選抜剣道八段優勝大会3連覇の栄花直輝教士は言う。応用動作は基本という土台があって初めて成立する。平素の稽古では正しさを求めることに重きを置き、そこから応用につなげることが大切だ。
栄花直輝 教士八段
えいが・なおき/昭和42年北海道喜茂別町生まれ。東海大学第四高校(現東海大札幌)から東海大学に進み、卒業後北海道警察に奉職。全日本選手権大会優勝、世界選手権大会団体優勝4回・個人優勝、全日本都道府県対抗大会優勝、全日本選抜七段選手権大会優勝2回(熊本)、全日本選抜剣道八段優勝大会優勝4回など。現在、北海道警察本部教養課術科指導室長、北海道大学剣道部師範など。剣道教士八段。
工夫を先行させない
原理・原則を追究する
剣道の稽古は準備運動から始まり、素振り、着面してからは切り返し、打ち込みの基本稽古、掛かり稽古、地稽古などを行ないます。稽古メニューは幼少年から一般まで、ほとんど変わりがないものです。しかしながら、錬度に応じて身につけるべきことがあり、それが昇段審査の付与基準にもなっていると思います。
平素の稽古で心がけたいのは、まず教本に書いてある内容を身につけることです。例えば竹刀の握り方は、『剣道指導要領』に「左手の小指を柄頭いっぱいにかけて上から握り、小指、薬指を締め、中指を軽く締め、そして人差し指と親指は軽く添えるようにする」「右手も左手と同様に握り、小指、薬指を締め、中指を軽く締め、そして人差し指と親指は軽く添えるようにする。右拳は鍔よりわずかに離れるようにする」と記されています。
素振りや打ち込み稽古では正しい握り方ができていても、地稽古や試合になると、途端に握り方が変わってしまうことがないでしょうか。地稽古や試合は応用動作なので、基本とは違いますが、ここが乖離してしまうと素振り・打ち込み・地稽古・本番(試合・審査)が一本の糸でつながりません。工夫することは大事ですが、工夫のみが先行すると基本の裏付けがない我流になってしまいます。
剣道の打突部位は面、小手、胴、突きの4種類です。すべての技を身につけたいと考えてこれまで剣道を続けてきましたが、八段戦で決めることができた片手突きや右胴を基本稽古で行なうことはほとんどありません。これらの技は応用と言えますので、地稽古などで試すようにしています。
剣道は、打突部位を捉えただけでは有効打突にはなりません。そこには有効打突の要件・要素という原理・原則があります。原理・原則を意識し、基本と応用を高いレベルで追究していくことが重要と考えています。
普段通りが重要
剣道を日常生活に取り入れる
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