2023.1 KENDOJIDAI
撮影=笹井タカマサ
第64回全日本実業団大会は三井住友海上(本店)の優勝で幕を閉じた。13年ぶり7回目の栄冠。その中で、本間渉選手が大将として出場し、準決勝、決勝の大立ち回りで最優秀選手賞を獲得した。中央大時代は全日本学生大会団体優勝2回に貢献した実力選手。入社3年目で大仕事を成し遂げた。
本間 渉
準備と工夫の勝利で最優秀選手を獲得
「私にとって初めての全日本実業団大会出場でした。入社1年目、2年目ともに新型コロナウイルス流行のことがあって出場できませんでした。そのなかで今回優勝できましたので、本当によかったです」
入社3年目になった今年は関東実業団大会にも出場。本間選手にとって初めての実業団大会で3位入賞しており、その実力を見せていた。
「外之内貴洋監督が『常日頃、準備と工夫をしなさい』とよくおっしゃっていました。私たち実業団剣士は仕事が最優先です。そのなかで質の高い稽古を心がけて、切磋琢磨しながらやってきました」
今回の全日本実業団大会は前回の79チームをはるかに上回る302チームがエントリー。活気が戻ってきた本大会、他のチームも虎視眈々と上位進出を狙っていたが、三井住友海上本店チームは力強く勝ち上がっていった。準決勝では西日本シティ銀行本店チームと代表者戦となったが、本間選手が会心のメンを決めた。
「監督から『お前いけるか』と言われました。私も『どうですか、かみ合っていましたか』と確認し、注意点だけいただいて代表者戦に臨みました」
決勝の対戦相手は関東実業団大会優勝のNTT本社チームだ。先鋒戦、次鋒戦と引き分けたが、中堅戦で三井住友海上・森本選手が一本勝ちし、リードした状態で大将の本間選手に勝負が回ってきた。相手は、中央大学の先輩にあたる兵藤裕則選手。
「実は、同じ千葉県剣道連盟所属なので全国大会の予選でよく一緒にウォーミングアップをしたり、試合のアドバイスを交換し合っているんです」
普段から仲良くしている先輩と、大舞台での決勝戦。結果は、本間選手の二本勝ち。
「手の内を知った者同士の対戦なので、追いかける側は不利だったのもあると思います。立場が反対であれば、私が負けていたと思います」
淡々と分析する本間選手。勝因はなんだったのだろうか。優勝の原動力についても聞いた。
「私はもともと調子が良い、悪いなどを感じなくて、『1試合1試合全力を出し切る』というスタンスでやっています。今回、たまたま準決勝・決勝で活躍した私が最優秀選手賞を獲得しましたが、それ以外の試合では他の選手が活躍していました。全員の力が発揮された、チームワークで勝ち取った優勝ですし、全員が今回のMVPだと思います。また、今回の優勝に際しては部長、監督はじめ多くの先輩方に支えられて練習ができました。忙しい中でも稽古に顔を出して下さった先輩もいらっしゃいます。コロナ禍において練習環境を整えて下さったのも先輩方ですし、会社と折衝してくださったのも大変だったと思います」
本間選手にとっては初めての全日本実業団大会だった。単純に優勝できてうれしいと思ったが、何より印象的だったのは、周りで号泣して喜ぶ古株の先輩の姿があったこと。
「先輩方にとって、この13年はつらい日々だったんだなと思うと……。沢山の応援をいただいて伝統ある部の素晴らしさをあらためて感じましたし、また、試合でも応援を背に受けたからこそ、後押ししていただいて、最後に一本を決めることができたのではないかと思いました」
元立ちに対する意識改革
稽古の改善につながった
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