インタビュー

強豪七段の技術と稽古(内村良一)

2024年5月20日

2024.5 KENDOJIDAI

写真=西口邦彦
構成=土屋智弘

近年は全日本選抜剣道七段選手権で三度の準優勝、そして本年二度目の3位の戦績を収め、指導者としては警視庁特練や本年開催される世界選手権大会のコーチとして活躍する内村教士。その華麗なる実績は伝説の域にあるが、現在はどのような思いで剣道に向き合っているのか。七段戦の振り返りを交えてお話しいただいた。

内村良一教士七段

うちむら・りょういち/昭和55年生まれ、熊本県出身。九州学院高校から明治大学に進み、卒業後、警視庁に奉職する。主な戦績として、全日本選手権大会優勝3回、世界選手権大会団体優勝3回、全国警察官大会団体優勝・個人優勝など、その実績は枚挙に暇がない。剣道教士七段。現在、警視庁剣道教師、第19回世界剣道選手権大会男子日本代表コーチ。

七段戦を振り返り
自分の課題を見つける

 まずは2月に行われた七段戦を振り返ってみます。昨年、一昨年と決勝で敗れてしまい準優勝でしたので、今年こそはの想いが強かったのですが、果たすことができませんでした。

 本年は竹ノ内佑也選手が警視庁剣道特練の主将を務めています。その剣道特練や世界大会男子メンバーのコーチを拝命しておりますが、そんな環境下でも七段戦に出場すべく、平尾泰主席師範、原田悟監督には、万全な環境を整えていただき、感謝に堪えません。

 緒戦となるリーグ戦1試合目の亀井選手とは、一昨年の決勝を戦いました。一本を狙って戦ったのですが、引き分けに終わりました。続く笹川選手との試合は何とかしなければいけない、勝負所になると思い臨みました。なんとか小手を二本決めることができ、次につながりました。次の海老原選手との一戦ですが、彼とは警察大学術科養成課で同期だったこともあり、よく知る仲です。ちょうどコロナ明けの時期でしたので、制約が多く稽古の日数も少ない上に縛りもあり、声を出さずに稽古を少し行った程度でした。そうした苦しい環境下をともに過ごしましたので、この七段戦で試合ができて嬉しかったです。

 本大会、海老原選手は状態がとてもよく、一本目に出がしら面を決められました。私の頭にはその狙い所があり警戒していましたが、取られてしまいました。稽古を良くされているのか、充実した様子でした。その後も面を狙われていたのを感じました。取られた直後の二本、三本も海老原選手はいいタイミングで出てこられていました。私の入りが大きくなっていたのか、取り返そうと気負い過ぎていたのか、入りのタイミングが合わないと感じていたところでしたので、返し技に切り替えて返し胴を狙いました。しかしその手は相手も警戒していたのか、上手くいかず、結果的に面返し面を選択したところ二本決めることができました。

 私の入りを海老原選手は良く研究されている気がしました。しかし試合の流れを変えるためには、必ずどこかに糸口があると信じ、攻め続けることが大事だと肝に銘じております。それが今回決めることのできた技につながったのだと思います。一方でその糸口が見つからずに試合が終わってしまった場合は、自分の努力が足りないのだと考えることにして反省します。

相手に攻め勝つ重要性
間合に入る前に乗る

 決勝トーナメントでは、引き分けという選択肢はなく、一戦ごとに勝つか負けるかの勝負となります。私は攻撃が主である剣道を貫くようにしておりますので、相手に気負けをしないよう心掛けて戦いました。

 準々決勝では、大阪の古川選手との対戦でした。この一戦でも私の入り際を狙われている印象を受けましたが、機会を捉えて小手を決めることができました。

 続く準決勝は、警視庁の後輩となる畠中選手との一戦でした。試合の流れの中で、機会を見つけ出して技を出せればと思い戦っていました。しかし延長に入ってからの最後、入りが大きくなってしまったところを、出がしら面に合わせられました。反省点であり、研究が必要だと痛感しています。私は上背があるわけではありませんから、物理的に考えて、大きく入る場面も必要となってきます。その入りをする前にどうつくるかが重要になります。自分が相手に乗っていれば、相手の隙に間を詰められると思いますので、今回いただいた場面では、攻め勝っていなかったのではと感じています。

 試合の後は、勝っても負けても反省をし、良かったところ、悪かったところを自分なりに分析します。それをどう拾い上げて次に繋げるかを大事にしています。

上手への懸かる稽古を自ら求める



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