剣道の技

剣道修行の要諦(右田重昭)

2024年6月10日

2024.6 KENDOJIDAI

構成=寺岡智之
撮影=西口邦彦

国士舘大学で教鞭を執る右田重昭範士は、PL学園高校から国士舘大学、そして現在に至るまで基礎基本の徹底を剣道修行の主眼においてきた。「剣道は生涯学んでいくものだからこそ、日々の稽古では必ず基本の習得に努めてもらいたい」と話す右田範士に、剣道を求めていく上での要点について語っていただいた―。

右田重昭 範士八段

みぎた・しげあき/昭和30年生まれ、熊本県出身。中学時代に剣道をはじめ、PL学園高校から国士舘大学に進学。卒業後は国士舘大学の指導者としての道を歩む。主な戦績として、寬仁親王杯八段大会3位、全国教職員大会団体優勝、全日本都道府県対抗大会優勝、国体3位などがある。現在は国士舘大学体育学部教授、剣道部長を務め、後進の指導にあたっている

PL学園で培った基礎基本が今につながる剣道の土台に

 剣道修行の肝心かなめは、何をおいても基礎基本の励行だと思います。私は今年で68歳になりましたが、とくにPL学園で剣道を学ぶことになって以降、現在に至るまで基本の修練を続けています。

その甲斐もあって、現在まで元気に剣道が続けられているのだと思います。

 私がこれまで歩んできた道を振り返ってみると、中学生で剣道をはじめた当時は指導者もおらず、基本をしっかりと学ぶことができませんでした。そのかわりに陸上や野球にも勤しみ、基礎体力をつけることができたおかげで、バランスのよい運動能力を身につけられたと思います。剣道は幼いころにはじめなければ技術が身につかないとはよく言われることですが、私は決してそんなことはないと考えています。むしろ、剣道だけをやっていると、剣道に必要な筋力だけが発達し、バランスの悪い身体になってしまいます。いずれどこかの年代で基礎基本をしっかりと指導してくれる先生に出会うことができれば、そこからでもしっかりと成長できるはずです。

 手と足もバラバラで基本もままならない私がPL学園剣道部に進んだのは、今振り返っても不思議な縁でしたが、ここで私の人生は大きく変わっていきました。1・2年時は切り返しとかかり稽古の繰り返しで徹底的に基本の修練を行ないました。このときの経験が、私の土台となっていることは間違いありません。同級生16人中16番だった私が、2年生の夏には1番になっていました。もちろん親から授かった身体能力も大きかったとは思いますが、中学時代にさまざまな競技を経験したこと、そして高校で基礎基本を叩き込まれたことによって、一気に成長することができたのだと思います。

 3年生になってからは監督が川上岑志先生へと代わり、さらに厳しい稽古を積むようになりました。川上先生は「誰からも文句の言われない勝利」とつねづね言われていました。それは正しい剣道で勝つということです。右足に切った竹をくくりつけられ、左足が右足を追い越さないように指導されたこと。背中に木刀を突っ込まれて背筋を伸ばした正しい姿勢のまま打つことを求められたこと。そして足を継がずに一足で打つこと。これらはすべて正しい剣道を身につけるために、当時の私には必要なことでした。あの時代があるからこそ、国士舘大学に進んでも違和感なく正しい剣道を求めることができたのだと思います。

基本の習得と試合での勝利両輪を求められた国士舘

 国士舘大学では大野操一郎部長指導のもと、さらに厳しく正しい剣道を突き詰めることを課せられました。大野先生は日ごろから、人よりも多く竹刀を振ることの重要性を言われていました。切り返しやかかり稽古など、基本の習得にかける時間はとくに多かったと記憶しています。その上で試合にも勝つことを求められましたから、我々学生も必死でした。 よく基本だけやっていたら試合には勝てないという話も聞かれますが、それは少し考え方が違うと思います。基本の土台があるからこそ応用へとつながり、試合で勝つ技術も身につけられるのです。たとえば試合において、昨今は左拳を中心から外して受けに終始する場面が多く見受けられます。これが試合に勝つことにつながるのかと言われると、疑問を感じざるを得ません。剣道は相手を打つことが一つの目標ですから、どんな場面においても打つことを諦めてはならないわけです。そう考えたときには、受けるのではなくさばくという技術が必要であり、それは基本の習得で身につけるべきことになります。もちろん、基本の習得と試合での勝利を両立することは並大抵のことではありませんが、そこを求めていくことが剣道修行の道筋であると考えます。

基本を身につけるために励行したい切り返しとかかり稽古

 基本の習得は生涯をかけて求めていくべきものです。とくに切り返しや打ち込み、かかり稽古は時間をみて行なっておくべきでしょう。私はさまざまな稽古会に顔を出す機会がありますが、最近気になっているのはかかり稽古の時間の短さです。短いだけならまだしも、かかり稽古を行なわない稽古もよく目にします。かかり稽古は腰始動の打突、打突力の強化、素早い足さばきなど、剣道の技術向上に直結する欠かせない稽古法です。私が高校生のころは、片方がかかり稽古をして2分間の地稽古、その後、もう片方がかかり稽古をしてふたたび2分間の地稽古という稽古法がありました。キツい状態でいかに集中して正しい剣道が実践できるかを求められていたのだと思います。たしかに大人の稽古会ではその時間をとることは難しいかもしれません。しかし、年齢を重ねれば重ねるほど、そういった厳しい稽古に取り組まなければ体力も剣道の力も低下してしまいます。ぜひ折りを見て、かかり稽古を日々の稽古に取り入れてほしいと思います。

 そしてもう一つ意識していただきたいのが、切り返しの方法です。剣道における竹刀の振り方は、まっすぐ振り下ろすか約斜め45度に振り下ろすか、この2通りしかありません。面はもちろん、小手も胴も同じです。この竹刀の振り方を、肩・肘・手首を遣いながらいかに物打ちに力を込めていくか、これが切り返しで最も重要な部分だと私は考えています。剣道の稽古に切り返しはつきものですが、しっかりと意識をして取り組んでいるかと言われると、そうでない人がほとんどでしょう。しかし、剣道の技術を身につけるのにこれほど適した稽古法はありませんから、切り返しから正しい剣道を実践できるよう取り組んでもらいたいと思います。

先をかけた剣道を実践
剣道は何歳になっても修行の道中



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