稽古方法

伸びる稽古(大澤規男)

2024年12月9日

2024.11 KENDOJIDAI

撮影=笹井タカマサ

「剣道上達に近道はありません」と大澤範士は強調する。一方、近道はないが、素直な心で正しい道を進むことが上達につながる。その筋道を大澤範士に解説していただいた。

大澤規男範士八段

おおさわ・のりお/昭和35年埼玉県皆野町生まれ。皆野高校卒業後、埼玉県警察に奉職する。全日本選手権大会2位1回3位2回、世界剣道選手権大会出場、全国警察官大会団体二部優勝・個人3位、国体優勝、全日本選抜八段優勝大会3位、全日本東西対抗大会出場など。現在、埼玉県警察術科師範。

素直な心で学ぶ
剣道上達に近道なし

 警視庁名誉師範の森島健男先生がご存命中、「剣道は単純なことの繰り返しだが、その繰り返しの中で真理が生まれ、名人、達人が生まれる」と教えていただく機会がありました。剣道は素振り、切り返し、打ち込み、掛かり稽古、指導稽古など、初心者から熟練者まで稽古の項目はほとんど変わりません。しかし、初心者から熟練者まで、修行の段階があり、同じ稽古でも求めるべき内容はおのずと変わります。相手の心を打つまでの長い修行が必要ではないかと感じています。数をかけてじっくりと学ばなければならず、それゆえ「剣道上達に近道なし」と心得て取り組んでいます。

 また、剣道は一人では成長できません。素直な心で学ぶ姿勢を持つことがとても大切です。とくに加齢とともに教わる機会は少なくなり、高段者になると長年の修行によって身についた個癖に気づかないことがあります。

 幕末の剣士島田虎之助は「剣は心なり、心正しからざれば、剣又正しからず、すべからく剣を学ばんと欲する者は、まず心より学べ」と名言を残しています。「剣は人なり、剣は心なり」と言われるように、剣は人間の心によって動くものであり、剣と心は一元的なものと考えています。

「明鏡止水」の心境で、雑念を捨て、何事も素直に受け入れることが、剣道修行には必要です。できていると思ってできていないのが剣道です。素振り一つとっても自分のイメージ通りにできていないことがあります。まずは素直な気持ちで助言を受け入れ、その助言を自分で考え、工夫しながら改善することが成長につながります。

 私の好きな言葉に「無為自然」(老子がめざす生き方で「無」の道に従って、いっさいの作為を捨て自然のままに生きること)があります。いっさいの作為を捨て、雑念なく生きることはとても難しいことですが、難しいからこそ、求める価値があると思います。

合気になっているか
打たれて喜ぶ稽古を求める



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