剣道のメンタル強化法

剣道のメンタル強化法 vol.16 フィードバックの法則

2025年8月13日

私がこの執筆で目指したことは、単に難解な心理学研究の知識やトピックを示すのではなく、様々なレベルの剣士やアスリートが日々の中で「感じ」、「考え」、「実行」してきたことを心理学の理論と方法論に乗せながら、できるだけ具体的でわかりやすく解説することでした。各稿は、心理学の一テーマと剣道や日常場面とをリンクさせながらストーリー展開することをベースとしています。その中の一フレーズでも心に留まり、明日からの剣道の拠り所となってくれたら著者としてはこの上ない喜びです。

矢野宏光(やの・ひろみつ)

1968(昭和43)年 秋田県湯沢市生まれ。東海大学体育学部武道学科剣道コース卒業。東海大学大学院修士課程体育学研究科(運動心理学)修了。名古屋大学大学院博士後期課程教育発達科学研究科(心理学)満期退学。現在、国立大学法人高知大学教育学部門 教授。スポーツ心理学のスペシャリストとしてさまざまな競技のサポートに取り組むと同時に同大学剣道部監督。また、スウェーデン王国剣道ナショナル・チーム監督(2004~2009)など国際的にも活躍。一貫して「こころ」と「からだ」のつながりに焦点をあてた研究活動を展開。全日本東西対抗剣道大会出場(優秀試合賞1回)など。剣道教士七段。

フィードバックの法則

「どうしたらもっとよい技が出るのか。もっとうまくいくのでは……。次はこんなふうにしてみよう」など、われわれは稽古後に自らを振り返りながら、その情報を次の稽古や立合に活かしています。この行為は「フィードバック」と呼ばれ、スポーツ心理学では、「行動や反応についての情報(結果の知識)をもとに、その情報を修正しながら、より適切なものにしていく仕組み」と説明しています。

フィードバックの種類は「内的フィードバック」と「外的フィードバック」に大別されます。内的フィードバックとは、体内の筋感覚やバランス感覚から情報を得るもので、上級者になるほどこのタイプのフィードバックを多く用います。ですから、初心者や運動中の微妙な筋やバランスの感覚の違いに気づくことができない人には難しいと考えられます。

 一方、外的フィードバックとは、自分の身体から外に出て、ビデオ映像やコーチなど自分以外の眼から得られた情報によってフィードバックされるものです。剣道の試合後に選手が監督からアドバイスをもらっているのはまさに外的フィードバックといえます。

 そこで、次にどのようにフィードバックを用いることで運動技能の習得や修正に効果を上げるのかについて、ケル(Kerr, 1982)の研究を参考にしながら効果的なフィードバックの方法を紹介します。

一、フィードバックを与える人



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