剣道のメンタル強化法

矢野宏光:剣道のメンタル強化法 vol.12 剣道は物語だ。ナラティヴ・アプローチ

2023年3月20日

私がこの執筆で目指したことは、単に難解な心理学研究の知識やトピックを示すのではなく、様々なレベルの剣士やアスリートが日々の中で「感じ」、「考え」、「実行」してきたことを心理学の理論と方法論に乗せながら、できるだけ具体的でわかりやすく解説することでした。各稿は、心理学の一テーマと剣道や日常場面とをリンクさせながらストーリー展開することをベースとしています。その中の一フレーズでも心に留まり、明日からの剣道の拠り所となってくれたら著者としてはこの上ない喜びです。

矢野宏光(やの・ひろみつ)

1968(昭和43)年 秋田県湯沢市生まれ。東海大学体育学部武道学科剣道コース卒業。東海大学大学院修士課程体育学研究科(運動心理学)修了。名古屋大学大学院博士後期課程教育発達科学研究科(心理学)満期退学。現在、国立大学法人高知大学教育学部門 教授。スポーツ心理学のスペシャリストとしてさまざまな競技のサポートに取り組むと同時に同大学剣道部監督。また、スウェーデン王国剣道ナショナル・チーム監督(2004~2009)など国際的にも活躍。一貫して「こころ」と「からだ」のつながりに焦点をあてた研究活動を展開。全日本東西対抗剣道大会出場(優秀試合賞1回)など。剣道教士七段。

剣道は物語だ。ナラティヴ・アプローチ

 近年、心理学や精神医学の臨床領域を中心としてナラティヴ・アプローチが注目を集めています。「ナラティヴ」とは、「語り」や「物語」という形式を手がかりとしてなんらかの現実に接近していく方法であると定義されています。すなわち、ナラティヴ・アプローチでは、みずからの人生をひとつの物語と考え、自分はその物語の主人公として、生きながらにして新たな物語をつくっていることがその根幹を成しています。そしてだれかにその物語を「語る」ことによって、自分の過去のエピソードには新たな視点で違った意味づけが生まれ、解釈が変わることによって否定的であった自分の過去が肯定的になり、これから訪れる自分の未来には希望が見えてくるというのです。それにより、結果として現在が安定することにつながります。つまり、自分の物語を「語る」ことには、心理的安定を図る効果があるのです。



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